共有不動産の紛争を弁護士に依頼するとき 持分の買取り、分割及び明渡しの進め方

登記簿には自分の名前が持分3分の1として載っているのに、その建物には兄が1人で住んでいて家賃は入ってこない。売ろうと持ちかけても取り合ってもらえず、固定資産税の請求だけは毎年届く――本記事は、そのように共有不動産の持分を持ちながら、使うことも売ることもできない状態に置かれた共有者の方に向けて書いています。

共有は、放っておいても解消しません。むしろ相続が重なるたびに共有者が増え、連絡先の分からない者が現れ、解決の費用は上がっていきます。他方で、令和5年4月1日に施行された改正民法により、共有物の管理、所在等不明共有者への対応、裁判による分割の方法について、使える手続は明らかに増えました。問題は、どの手続を、どの順序で選ぶかです。

本記事では、共有不動産の紛争を弁護士に依頼した場合に実際に何が動くのかを、持分の買取りの交渉、共有物分割の訴え、明渡しの請求という3つの出口に沿って説明します。弁護士に依頼すべきかどうかという一般論ではなく、依頼した後の段取りの話です。

本記事が扱う場面と、扱わない場面

持分が確定している通常の共有と、遺産分割が終わっていない遺産共有とでは、用いることのできる手続が異なりますので、場面を分けて解説しています。

Contents
  1. 共有だから何もできない、という前提を外すところから始めます
  2. 独り占めされている場合に請求できるもの
  3. 持分の買取り――交渉で決着させる場合の値段の決め方
  4. 共有物分割の訴え――3つの分割方法と、選ばれる順序
  5. 共有者と連絡が取れない場合に用いる3つの裁判
  6. 遺産分割が終わっていない持分が混じっている場合
  7. 相手方の共有者が話し合いに応じないのは、なぜか
  8. 弁護士に依頼した後、実際には何がどの順序で進むのか
  9. いま確認していただきたいこと
  10. よくあるご質問
  11. おわりに
  12. 出典

共有だから何もできない、という前提を外すところから始めます

全員の同意が必要なのは「変更」だけです

各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更を加えることができません。ただし、その形状又は効用の著しい変更を伴わないものは除かれます(民法第251条第1項)。売却、建物の取壊し、大規模な増改築はこの「変更」に当たりますので、全員の同意が要ります。

管理に関する事項は、持分の価格の過半数で決まります

共有物の管理に関する事項は、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決します(民法第252条第1項)。頭数ではなく持分の価格である点に注意してください。3人の共有でも、持分2分の1を持つ者と4分の1を持つ者の2人が合意すれば、残る1人の反対にかかわらず決定できます。

この過半数で決められる管理には、賃借権等の設定も含まれます。ただし期間の上限があり、樹木の栽植又は伐採を目的とする山林の賃借権等は10年、その他の土地は5年、建物は3年、動産は6か月です(民法第252条第4項各号)。

保存行為は、1人でできます

各共有者は、保存行為をすることができます(民法第252条第5項)。雨漏りの修繕、不法占有者に対する明渡しの請求、真正な登記名義の回復を求める登記手続の請求などがこれに当たります。何もできないと諦めておられた方が、実は単独でできる行為を持っているという場面は少なくありません。

返事をしない共有者は、裁判で議決から外せます

共有者に対し相当の期間を定めて賛否を明らかにすべき旨を催告したにもかかわらず、その期間内に賛否を明らかにしないときは、裁判所は、請求により、その共有者以外の共有者の持分の価格の過半数で管理に関する事項を決することができる旨の裁判をすることができます(民法第252条第2項第2号)。他の共有者を知ることができず、又は所在を知ることができないときも同様です(同項第1号)。無視を続ければ止められるという状態は、すでに法律上解消されています。

独り占めされている場合に請求できるもの

持分を超える使用の対価を償還する義務があります

共有物を使用する共有者は、別段の合意がある場合を除き、他の共有者に対し、自己の持分を超える使用の対価を償還する義務を負います(民法第249条第2項)。令和5年4月1日の改正により明文化された規定です。兄が単独で住んでいる建物について、持分3分の1を有する方は、賃料相当額の3分の1を請求できるのが原則ということになります。

金額は賃料相当額に持分割合を乗じて算定します

賃料相当額は、近隣の同種同規模の物件の募集賃料、不動産業者の査定、必要に応じて不動産鑑定によって認定します。ここから固定資産税や修繕費のうち使用者が負担した分を控除する扱いがされることがありますので、相手方が負担した費用の資料も併せて集めておく必要があります。

明渡しを求められる場合と、求められない場合があります

共有者の1人が共有物を占有している場合、他の共有者は、当然には明渡しを請求できません。占有している者も持分に基づく使用の権原を有しているからです。したがって、実務上は、対価の償還請求を積み上げて交渉の圧力とし、応じない場合には共有物分割の訴えに進むという組立てを取ります。他方、賃貸借契約が終了した第三者や、何らの権原もなく占有している者に対しては、保存行為として単独で明渡しを請求できます。

持分の買取り――交渉で決着させる場合の値段の決め方

持分の価格は、不動産全体の価格に持分割合を乗じた額とは限りません

共有持分だけを市場で売ろうとすると、単独所有の不動産に比べて大きく減価されるのが通常です。買った者が自由に使えず、他の共有者との紛争を引き受けることになるからです。逆に、他の共有者が買い取る場面では、その者にとっては単独所有になるという利益があるため、減価を前提とした価格をそのまま押し付けられる理由はありません。この非対称を意識せずに交渉を始めると、不利な価格で合意してしまいます。

持分を第三者に譲渡することは自由です

持分の処分は各共有者が単独ですることができ、他の共有者の同意は不要です。実際、共有持分を専門に買い取る業者が存在し、譲渡を受けた後に他の共有者へ高値での買取りを求め、応じなければ共有物分割の訴えを提起するという行動を取ることがあります。御自身が持分を売る場合にも、他の共有者が売ってしまった場合にも、この動きを前提に方針を立てる必要があります。

合意書には、清算と登記の段取りまで書き込みます

買取りの合意ができた場合、代金額だけでなく、固定資産税の精算、過去の使用の対価の清算、抵当権が付いている場合の抹消の手順、登記申請の期日と費用の負担を明記します。ここが曖昧なまま署名すると、代金を支払った後に新たな争いが生じます。

共有物分割の訴え――3つの分割方法と、選ばれる順序

まず協議が調わないこと、又は協議ができないことが要件です

共有物の分割について共有者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、その分割を裁判所に請求することができます(民法第258条第1項)。したがって、訴えの前に協議を申し入れた記録を残しておくことが実務上重要です。代理人名義の書面で協議を申し入れ、その回答又は無回答をもって要件を満たすという進め方が通常です。

裁判所が命ずるのは、現物分割か、賠償分割です

裁判所は、共有物の現物を分割する方法と、共有者に債務を負担させて他の共有者の持分の全部又は一部を取得させる方法により、分割を命ずることができます(民法第258条第2項)。後者が賠償分割(全面的価格賠償)です。土地であれば分筆による現物分割が可能な場合もありますが、建物や狭小な土地では、誰か1人が取得して他の者に金銭を支払う賠償分割が中心となります。

競売は、それらができない場合の最後の手段です

前項の方法により分割することができないとき、又は分割によってその価格を著しく減少させるおそれがあるときに、裁判所はその競売を命ずることができます(民法第258条第3項)。競売による売却価格は市場価格を下回ることが多いため、取得を希望されるのであれば、賠償分割を求める主張と、代金を支払う資力があることの疎明を早い段階から積み上げる必要があります。

明渡しや登記までを1つの判決で命じてもらえます

裁判所は、共有物の分割の裁判において、当事者に対して金銭の支払、物の引渡し、登記義務の履行その他の給付を命ずることができます(民法第258条第4項)。令和5年4月1日の改正により新設された規定で、実務上の意義は大きなものがあります。賠償分割を命ずるとともに、居住している共有者に対する明渡しまで同じ判決で命じてもらえるため、別途の訴訟を要しません。

共有者と連絡が取れない場合に用いる3つの裁判

所在等不明共有者の持分を、自分が取得する裁判があります

不動産が数人の共有に属する場合において、共有者が他の共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、裁判所は、共有者の請求により、その共有者に当該所在等不明共有者の持分を取得させる旨の裁判をすることができます(民法第262条の2第1項)。手続の中では、申立てがあった旨等を公告し、異議の届出のための期間が経過することが必要で、この期間は3か月を下ることができません(非訟事件手続法第87条第2項)。あわせて、裁判所が定める額の金銭を供託します(同条第5項)。所在等不明共有者は、後に持分の時価相当額の支払を請求できます(民法第262条の2第4項)。

不動産全体を第三者に売るための、譲渡権限を付与する裁判もあります

裁判所は、所在等不明共有者以外の共有者の全員が特定の者に対して持分の全部を譲渡することを停止条件として、所在等不明共有者の持分をその特定の者に譲渡する権限を付与する旨の裁判をすることができます(民法第262条の3第1項)。買主が決まっている場合に、不動産全体を一括して売却するための制度です。ただし、この裁判は、効力が生じた後2か月以内に譲渡の効力が生じないときは、その効力を失います(非訟事件手続法第88条第3項)。買主との契約の日程を先に固めてから申し立てる必要があります。

変更行為についても、裁判で同意を補うことができます

共有者が他の共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、裁判所は、共有者の請求により、当該他の共有者以外の共有者の同意を得て共有物に変更を加えることができる旨の裁判をすることができます(民法第251条第2項)。老朽化した建物の取壊しなどで用います。土地そのものの管理が必要な場合には、所有者不明土地管理命令(民法第264条の2第1項)や管理不全土地管理命令(民法第264条の9第1項)の申立てを選ぶこともあります。

遺産分割が終わっていない持分が混じっている場合

遺産共有の持分は、原則として共有物分割では分けられません

共有物の全部又はその持分が相続財産に属する場合において、共同相続人間で遺産の分割をすべきときは、その共有物又は持分について共有物分割をすることができません(民法第258条の2第1項)。遺産分割は家庭裁判所の管轄であり、共有物分割は地方裁判所の管轄です。この振り分けを誤ると、訴えを提起しても却下されます。

相続開始から10年を経過すると、地方裁判所で一括して処理できます

共有物の持分が相続財産に属する場合において、相続開始の時から10年を経過したときは、その持分についても共有物分割をすることができます(民法第258条の2第2項本文)。相続と共有が入り組んだ事案において、手続を1本にまとめられる意味は大きいものがあります。

ただし、相続人の異議の申出は2か月以内です

相続人が異議の申出をしたときは、共有物分割によることはできません(民法第258条の2第2項ただし書)。この申出は、当該相続人が共有物分割の請求があった旨の通知を裁判所から受けた日から2か月以内にしなければなりません(同条第3項)。たとえば令和8年10月5日に通知を受けた場合、申出をすることができるのは令和8年12月5日までです。1日でも遅れれば、遺産分割を求める道は閉じます。訴状が届いた段階で速やかに御相談ください。

相手方の共有者が話し合いに応じないのは、なぜか

第1に、現状が最も得だからです

共有不動産に住んでいる共有者は、分割が成立しないかぎり、持分に見合わない使用を続けることができます。分割が成立すれば、代償金を支払うか、退去するかを迫られます。応じないことがその方にとって最も合理的である以上、話し合いを重ねるだけでは動きません。

第2に、代償金を支払う資力がないからです

取得を希望しているものの資金の目処が立たず、その事実を認めたくないために交渉を先延ばしにしているという場合があります。この場合、競売の可能性を具体的に示すと、態度が変わることがあります。競売になれば、住み続けることも、有利な価格を得ることもできなくなるからです。

第3に、家族の中の立場の問題があるからです

親の面倒を見てきた、家業を継いだ、家名を守っているという意識から、金銭で解決することそのものに抵抗を示す方がおられます。この場合は、金額の交渉に入る前に、居住の継続を一定期間認める、仏壇や墓地の承継を明記するといった財産以外の条件を先に整理すると、話が進むことがあります。

弁護士に依頼した後、実際には何がどの順序で進むのか

第1段階 権利関係と評価を固めます

登記事項証明書と公図、地積測量図、建物図面を取得し、持分の割合と抵当権等の負担を確認します。共有者の住民票又は戸籍の附票を取り寄せ、所在の確認を行います。連絡が取れない者がいる場合は、この段階で前述の3つの裁判のいずれを用いるかを決めます。あわせて、不動産の評価と賃料相当額の資料を整えます。

第2段階 代理人名義で協議を申し入れます

持分の買取り、分割の方法、使用の対価の清算について、具体的な金額と根拠を示して協議を申し入れます。共有物分割の訴えの要件を満たすためにも、この記録は必ず残します。相手方に代理人が就いた場合には、この段階で解決の方向が見えてくることが多くあります。

第3段階 訴えを提起し、和解と判決を見比べます

協議が調わなければ、地方裁判所に共有物分割の訴えを提起します。訴訟の中でも和解の機会はありますので、判決で得られる見込みと和解案とを比較しながら判断します。判決に至る場合の期間は、鑑定の要否によって大きく変わりますので、受任の段階で見通しの説明を受けてください。

いま確認していただきたいこと

  • 登記事項証明書を取得し、共有者の氏名、持分の割合、抵当権等の有無を確認してください。
  • 被相続人名義のままの持分が混じっていないかを確認してください。混じっている場合は手続の振り分けが変わります。
  • 相続が開始した日を確認し、10年を経過する日を計算してください。
  • 共有者に対して過去に送った書面や、返信の記録を日付の分かる形で整理してください。
  • 共有物分割の訴状が届いている場合には、答弁書の提出期限と、異議の申出の2か月の期限を直ちに確認してください。

よくあるご質問

自分の持分だけを売ることはできますか

できます。持分の処分に他の共有者の同意は不要です。もっとも、持分のみの売却は価格が大きく下がりますし、買い受けた者と他の共有者との間で新たな紛争が生じます。他の共有者に買い取らせる交渉や共有物分割の訴えと比較したうえで判断されることをお勧めします。

共有物分割の訴えを起こされました。放置するとどうなりますか

答弁書を提出せず出頭もしないと、相手方の主張に沿った判決がされる可能性があります。競売を命ずる判決がされれば、住み続けることはできません。また、遺産共有の持分が含まれる場合の異議の申出には2か月という期限がありますので、対応の遅れが取り返しのつかない結果を招きます。

共有者の住所が分かりません。それでも手続を進められますか

進められます。住民票の除票や戸籍の附票を追跡してもなお所在が判明しない場合には、民法第262条の2の持分の取得の裁判、民法第262条の3の譲渡権限の付与の裁判、民法第251条第2項及び第252条第2項の裁判のいずれかを用います。どれを選ぶかは、最終的に不動産をどうしたいかによって決まります。

費用と期間はどのくらいですか

持分の数、所在不明者の有無、鑑定の要否によって大きく異なりますので、一律には申し上げられません。当事務所では初回の御相談は無料で承っておりますので、登記事項証明書をお持ちいただければ、想定される手続と費用の見込みを具体的に御説明します。

おわりに

共有不動産の紛争が長引くのは、当事者の側に、相手を動かす手段がないと感じられているからです。しかし実際には、持分の価格の過半数で決められること、1人でできること、裁判所に決めてもらえることが、法律上はっきり分かれています。この切り分けができた時点で、交渉の景色は変わります。

共有は、時間が経つほど当事者が増え、費用が上がり、選べる手段が減っていきます。いま登記事項証明書を1通取り寄せるところから、解決は始まります。必ず解決できますから、一緒に頑張りましょう。

共有不動産の紛争に関する御相談
弁護士法人M&A総合法律事務所 電話番号 03-6435-8418
受付時間 8時00分から21時00分まで(土曜・日曜・祝日を含みます)

出典

  • 民法第249条第2項
  • 民法第251条第1項及び第2項
  • 民法第252条第1項、第2項第1号及び第2号、第4項各号、第5項
  • 民法第258条第1項から第4項まで
  • 民法第258条の2第1項、第2項及び第3項
  • 民法第262条の2第1項及び第4項
  • 民法第262条の3第1項
  • 民法第264条の2第1項、第264条の9第1項
  • 非訟事件手続法第87条第2項及び第5項
  • 非訟事件手続法第88条第3項

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