相続した土地を同族会社が使い続けている場合の対応|賃料・固定資産税・明渡しの問題を解説

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同族会社が使い続ける土地への対応に関するメインのページです。本ページは、不動産の相続の後に賃料、固定資産税及び明渡しをめぐり生じる問題をご説明します。過去の賃料の請求の範囲は中核のページをご参照ください。

▶ 過去の分をどこまで遡って請求できるのか

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父母から土地や建物を相続したところ、その不動産を同族会社が本社、工場、倉庫、駐車場等として使い続けており、相続人自身は利用できない一方で、固定資産税や修繕費だけを負担している――このような相談があります。

この問題は「会社が家族なのだから使わせるしかない」「所有者になったのだからすぐ明け渡してもらえる」という単純なものではありません。まず、会社が不動産を使用する法的根拠が賃貸借なのか、使用貸借なのか、契約書はなくても賃料支払等の実態があるのかを確認する必要があります。さらに、会社株式の事業承継、遺産分割、株式と不動産の評価が複合していることがあります。

先に結論を申し上げると、相続人が最初にすべきことは、明渡しや過去賃料の請求ではなく、所有関係と会社の使用権原を確定することです。その上で、今後の賃料・費用負担、継続利用、会社又は後継者への売却、段階的な明渡しを比較し、株式・遺産分割との関係も必要な範囲で整理します。

この記事の位置付け

同族会社が使用している不動産を相続した場合のご相談は、何を検討するかによって整理の仕方が異なりますので、場面を分けてご案内いたします。

Contents
  1. 最初に確認するべきこと
  2. 会社が土地を使う法的根拠を確認する
  3. 不動産の所有関係と会社の使用関係を別々に確定する
  4. 固定資産税等だけを相続人が負担している場合
  5. 賃料・費用負担を見直す場合の考え方
  6. 相続した不動産を会社に明け渡してもらえるか
  7. 明渡しを求めるか、利用を継続させるかは会社の事業継続も踏まえて比較する
  8. 会社との関係を解決する主な選択肢
  9. 非上場株式の相続・事業承継と同時に検討すべき理由
  10. 相続人がしてはいけない対応
  11. 相談時に準備するとよい資料
  12. 今後も会社へ使わせる場合は、相続後の当事者で契約関係を書面化する
  13. 売却価格や賃料を検討するときは評価目的をそろえる
  14. 遺産分割の段階で事業用不動産と株式を一体として評価する
  15. 借地借家法の適用の有無が結論を左右すること
  16. 相当の地代及び権利金に関する税務上の論点
  17. 相続人が複数である場合の請求の方法と根拠条文
  18. 会社が支払う賃料の水準をどのように定めるのか
  19. 明渡しを求める場合に必要となる正当の事由
  20. いま確認していただきたいこと
  21. よくあるご質問
  22. まとめ
  23. 出典・参考法令

最初に確認するべきこと

確認項目 具体的に確認する資料・事実
所有者・持分 不動産登記事項証明書、遺産分割協議書、遺言書
会社の使用根拠 賃貸借契約書、使用貸借契約書、覚書、取締役会・株主総会資料
賃料の支払実績 通帳、総勘定元帳、領収書、税務申告書の関連部分
固定資産税等の負担 納税通知書、管理費、保険料、修繕費
会社の設備投資 建物・附属設備・舗装・機械等を誰が設置したか
相続時の説明 遺産分割時に誰が何を負担すると合意したか
会社との人的関係 相続人が株主・役員か、後継者との関係
将来方針 賃貸継続、売却、明渡し、会社への譲渡、M&A等

会社が土地を使う法的根拠を確認する

賃貸借契約がある場合

会社が賃料を支払って土地・建物を使用している場合、賃貸借関係が問題となります。相続により所有者が変わっても、既存の賃貸借関係が当然に消滅するわけではありません。契約期間、賃料、更新、解約、修繕負担等を確認します。土地賃貸借では借地借家法が関係する場合もあり、所有者が相続したから直ちに自由に明渡しを求められるとは限りません。

無償の使用貸借である場合

先代経営者が自分の会社に無償で土地を使わせていた場合には、使用貸借である可能性があります。使用貸借の終了時期や返還を求められるかは、契約内容、使用目的、期間、当事者の事情等によって異なります。「無償だからいつでも返せる」「相続したから直ちに終了する」と一律には判断できません。

契約書がない場合

同族会社では、書面を作らずに「会社が昔から使っている」という状態が少なくありません。この場合には、賃料支払の有無、会計処理、先代経営者と会社の認識、利用開始時の経緯、会社による建物・設備投資等を確認して法律関係を整理します。

使用貸借と賃貸借のいずれであるかを判定する資料

使用貸借は、無償で使用及び収益をして契約が終了したときに返還をする契約であり(民法第593条)、賃貸借は、賃料の支払を伴う契約です(民法第601条)。契約書が見当たらない場合であっても、次の資料により実態を判定することができます。

  • 法人税の確定申告書の別表 役員又はその親族との間の取引の有無及び内容が記載されていることがあります。
  • 勘定科目内訳明細書の地代家賃の内訳 支払先、物件の所在及び年額が記載されます。地代家賃の計上がなければ、無償の使用である可能性が高いといえます。
  • 総勘定元帳及び預金の取引の記録 毎月の定額の支払が継続しているかを確認します。
  • 固定資産税の納税通知書及び領収の記録 固定資産税に相当する額のみを会社が負担している場合は、賃料の支払とは評価されないのが通常です。
  • 賃貸借契約書、覚書、取締役会又は株主総会の議事録 賃料の額を決めた記録が残っていることがあります。

これらの資料は会社の側が保管しています。相続人が会社の株主となっている場合には、議決権又は株式の数の100分の3以上を有することを要件として、会計帳簿又はこれに関する資料の閲覧又は謄写を請求することができます(会社法第433条第1項)。請求の理由を明らかにしてしなければならない点に注意が必要です。

不動産の所有関係と会社の使用関係を別々に確定する

相続人が複数いる場合は、誰が賃貸・売却・明渡しの判断をできるかを確認する

不動産が遺産分割未了で複数の相続人の共有状態にある場合、会社との契約条件を変更したり売却したりする場面では、共有関係に応じた判断が必要です。会社株式を取得した後継者だけが「会社のために土地も自由に使える」と考えることはできません。まず登記事項証明書、遺言、遺産分割協議の状況を確認し、不動産側の権利者を確定します。

土地と建物の所有者が違う場合は、それぞれの権利関係を確認する

先代経営者個人の土地上に会社所有の工場・店舗がある、土地も建物も個人所有だが会社が使用している、建物だけ後継者へ相続された、といった形があります。土地利用の権原、建物所有、設備投資の負担者を分けて確認しなければ、賃料や明渡しの議論を正しく組み立てられません。

契約書がなくても会計・税務資料から実態を確認できることがあります

同族会社では、賃貸借契約書が存在しなくても、会社の総勘定元帳に地代家賃が計上され、所有者の口座へ毎月送金されていることがあります。反対に、固定資産税相当額だけを会社が負担していることもあります。契約書だけでなく、通帳、総勘定元帳、法人税・所得税の申告資料、過去の覚書、設備投資資料から使用関係の実態を確認します。

固定資産税等だけを相続人が負担している場合

所有者である以上、固定資産税の納税義務と会社との費用負担は分けて考える

固定資産税の納税義務者と、会社との内部的な費用負担は同じ問題ではありません。所有者として税金を負担しているからといって、それだけで会社に同額を請求できるとは限らず、契約内容や従前の合意を確認する必要があります。

賃料が著しく低い又は無償の場合は、今後の条件を再検討する

相続人が会社経営に関与していないのに、会社だけが不動産を利用し、相続人が税金・管理費を負担し続ける状態では、将来の不公平感が大きくなります。既存契約を前提に、適正な賃料、費用負担、契約期間等を協議し、書面化することを検討します。

過去分を当然に遡って請求できるとは限らない

過去に無償使用を認めていたのか、賃料の合意があったのに未払いなのかで法的評価が異なります。契約関係を確認せずに「過去10年分の賃料を払え」等と一方的に請求すると、紛争を複雑化させることがあります。

賃料・費用負担を見直す場合の考え方

相続人が会社経営に関与せず、不動産だけを取得した場合、従来の無償又は低額な利用条件をそのまま続けることに不公平感を持つことがあります。ただし、相続によって所有者が変わっただけで既存の契約条件を当然に一方的変更できるとは限りません。現在の契約、更新・解約条項、過去の支払実績、会社の設備投資等を確認して、今後の条件を協議します。

賃料だけでなく、固定資産税・修繕・保険・原状回復等も決める

事業用不動産では、毎月の賃料だけでなく、固定資産税相当額、建物修繕、設備更新、火災保険、駐車場整備、原状回復等の負担が長期的な争点になります。従前は先代経営者が会社と個人の双方を管理していたため曖昧でも、相続後は所有者と会社経営者が別人になることがあります。今後の負担区分を書面化しておくことが重要です。

過去分の請求と将来条件の見直しを分ける

過去に無償利用を認めていたのか、賃料合意があるのに未払いなのか、固定資産税相当額を賃料としていたのかで結論は異なります。過去分の請求可能性を確認せず高額な遡及請求をすることと、将来の賃料・費用負担を改めて協議することは分けて考えます。

相続した不動産を会社に明け渡してもらえるか

明渡しの可否は、会社が有する使用権原の内容によります。賃貸借であれば、契約期間や解約・更新、借地借家法上の保護等を検討する必要があります。使用貸借でも、返還時期や使用目的等によって結論が異なります。

会社の事業継続に不可欠な本社・工場を突然使用できなくすれば、会社価値や従業員の雇用にも重大な影響を及ぼします。他方で、非後継者である相続人だけが不動産を負担し続けることも合理的とは限りません。法的権利を確認したうえで、賃料改定、会社又は後継者への売却、代替地への移転等を比較します。

明渡しを求めるか、利用を継続させるかは会社の事業継続も踏まえて比較する

工場、店舗、本社等がその土地に依存している場合、明渡しは会社の事業継続へ大きな影響を及ぼします。所有者に明渡しを求める権利があるかという法律問題だけでなく、移転可能性、移転期間、代替物件、設備の撤去・移設、従業員や取引先への影響を確認します。一方、会社のためだけに所有者が無期限で負担を続ける必要があるとも限りません。

継続賃貸

会社が継続利用する合理性が高い場合は、契約期間、賃料、費用負担、更新・解約、修繕、転貸等を整理し、現在の当事者名義で契約を整えます。相続前の口頭運用をそのまま継続するのではなく、相続後の所有関係に合わせて確認します。

会社又は後継者への売却

会社・後継者が取得できる資金力を有し、事業用不動産と事業を一体化する方が安定する場合には売却も選択肢です。売買価格、資金調達、会社の意思決定、担保権、税務を確認します。会社株式の評価や遺産分割との関係もあるため、不動産だけを切り離して価格を決めない方がよい場合があります。

段階的な移転・明渡し

会社が将来移転する予定であれば、明渡し時期、賃料、原状回復、設備撤去、移転までの利用条件を合意する方法があります。直ちに退去させるか無期限で使用させるかの二択にせず、会社の事業継続と所有者の負担を調整します。

会社との関係を解決する主な選択肢

選択肢 内容 向いている場面・留意点
賃貸を継続する 契約・賃料・費用負担を明確化 会社に継続使用させたいが相続人の負担を是正したい
賃料等を再交渉する 現状と市場・契約を踏まえて条件見直し 従前条件が不明確・著しく古い場合
会社又は後継者へ売却する 不動産所有と事業利用を一致させる 会社・後継者に資金調達余力がある場合
遺産分割全体で調整する 株式と事業用不動産の取得者を整理 遺産分割が未了又は再調整可能な場合
明渡しを協議する 移転時期・原状回復等を合意 会社が他の場所へ移転可能な場合
第三者売却を検討する 使用関係を整理したうえで売却 会社が取得しない場合。賃貸借等が価格へ影響

 

非上場株式の相続・事業承継と同時に検討すべき理由

事業用不動産と会社株式を別々に分けると利益と負担が分離する

後継者が会社株式を取得し、非後継者が会社使用不動産を取得する遺産分割は、形式上は財産を分けやすいように見えます。しかし、会社が安い賃料で不動産を使い続けると、後継者側は会社利益を得る一方、非後継者側は固定資産税等を負担する構造になり、後に紛争となることがあります。

不動産の価値と株式価値は相互に影響することがある

会社が重要な事業用不動産を所有している場合と、オーナー個人から借りている場合では、会社の財務・事業価値の見え方が異なります。また、相続税評価、遺産分割における不動産評価、M&Aにおける事業価値も目的が異なります。株式と不動産を同じ「相続税評価額」だけで調整することには注意が必要です。

M&Aをする場合には賃貸借関係が重要な確認事項になる

会社を第三者へ売却する場合、買い手は本社・工場等を継続利用できるかを確認します。会社がオーナー個人所有の不動産を契約書なしで使っている状態は、M&Aのデューデリジェンスで問題となることがあります。将来売却の可能性があるなら、平時に契約関係を整えておくことが有用です。

相続人がしてはいけない対応

  • 所有者になったことだけを理由に、会社の使用権原を確認せず直ちに退去を要求する
  • 契約書がないことだけで「不法占拠」と断定する
  • 過去の固定資産税や想定賃料を根拠なく一括請求する
  • 会社の後継者との家族上の対立と、不動産の契約関係を混同する
  • 株式の評価と不動産の評価を同じ基準で決めつける
  • 会社に売却する場合に会社法上・税務上の手続を確認せず進める

相談時に準備するとよい資料

  • 不動産登記事項証明書、公図、固定資産税評価証明書・納税通知書
  • 遺言書、遺産分割協議書、戸籍等
  • 賃貸借契約書、使用貸借契約書、覚書
  • 賃料入金が分かる通帳、会社側の支払資料
  • 会社の定款、登記事項証明書、株主名簿
  • 会社が行った建物・設備投資の資料
  • 会社と先代経営者・相続人とのメール等
  • 会社の移転・購入・M&A等の将来方針が分かる資料

今後も会社へ使わせる場合は、相続後の当事者で契約関係を書面化する

先代経営者と会社との間では、家族会社という理由から詳細な契約書を作らず運用していたケースがあります。しかし、相続後に不動産所有者と会社経営者が別人になったなら、従前の曖昧な運用をそのまま引き継ぐと、賃料・修繕・明渡しをめぐる認識の違いが表面化しやすくなります。現在の法的関係を確認したうえで、今後の契約期間、賃料、費用負担、解約、原状回復等を書面に整理します。

会社の設備投資をどう扱うかも確認する

会社が土地上に建物、舗装、倉庫、機械設備等を設置している場合、誰が所有し、明渡し時に撤去するのか、残存価値をどう扱うのかが問題となります。会社の帳簿、固定資産台帳、工事契約、領収書等で投資主体を確認し、不動産所有者の資産と会社資産を混同しないようにします。

売却価格や賃料を検討するときは評価目的をそろえる

会社又は後継者へ不動産を売却する場面では、固定資産税評価額、相続税評価、鑑定評価、市場での売却可能価格が同じとは限りません。また、会社が長期間利用していること、借地権・賃借権等が成立していること、建物・設備の所有関係によって第三者売却価格へ影響する場合があります。何のための価格かを明確にし、必要に応じて不動産評価の専門家と連携します。

賃料を見直す場合も、近隣相場だけで機械的に決めるのではなく、契約内容、利用面積、設備負担、税負担、従前の経緯を確認します。税務上の適正額の判断が必要な場合は税理士へ確認し、法律上の賃料増減・契約終了の可否とは分けて検討します。

遺産分割の段階で事業用不動産と株式を一体として評価する

先代経営者の相続で、後継者に会社株式、非後継者に会社使用土地を割り当てると、帳簿上は財産を分けたように見えても、会社がその土地を低額又は無償で使い続ける限り、経済的な利益と負担が分離します。後継者は会社の利益を受け、非後継者は固定資産税・管理負担を負うため、後から「公平ではなかった」という争いになり得ます。

遺産分割時には、不動産そのものの評価額だけでなく、会社が支払う賃料、契約期間、将来の修繕、売却可能性、会社株式の価値への影響を確認します。株式と不動産をそれぞれの相続税評価額だけで機械的に比較すると、実際の利用利益や負担が反映されない場合があります。

不動産を後継者側へ集める場合

会社株式と事業用不動産を後継者又は会社側へ集めると、事業利用と所有を一致させやすくなりますが、後継者の取得資金、他の相続人への代償、税務が問題になります。会社が取得する場合は会社の資金・機関決定も確認します。

非後継者が不動産を取得する場合

非後継者が所有者となる場合は、相続後すぐに会社との賃貸借・使用貸借の条件を確認し、賃料・費用負担・契約期間を明確にします。会社と所有者が別になること自体が問題なのではなく、条件が曖昧なまま長期間利用を続けることが紛争の原因になります。

借地借家法の適用の有無が結論を左右すること

同じく会社が土地を使用している場合であっても、借地借家法の適用があるかどうかで、明渡しを求めることができるかの結論が大きく変わります。借地借家法にいう借地権とは、建物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権をいいます(借地借家法第2条第1号)。したがって、会社が土地の上に自社の建物を所有し、賃料を支払っている場合には、借地権が成立します。

借地権が成立しますと、その存続期間は30年となり、契約でこれより長い期間を定めたときはその期間となります(借地借家法第3条)。期間が満了した場合であっても、建物がある場合に限り、借地権者が契約の更新を請求したとき、又は土地の使用を継続したときは、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなされます(借地借家法第5条第1項、第2項)。これに対して異議を述べるには、双方が土地の使用を必要とする事情のほか、借地に関する従前の経過、土地の利用状況及び財産上の給付の申出を考慮して、正当の事由があると認められることが必要です(借地借家法第6条)。

他方、会社が駐車場、資材置場又は通路として使用しているにとどまり、建物を所有していない場合には、建物の所有を目的とするものではありませんので、借地借家法の適用はありません。この場合は民法の規律によることとなり、期間の定めのない土地の賃貸借であれば、解約の申入れの日から1年の経過によって終了します(民法第617条第1項第1号)。無償の使用貸借であって、期間並びに使用及び収益の目的を定めなかったときは、貸主はいつでも契約の解除をすることができます(民法第598条第2項)。

そこで、まず登記事項証明書により土地の上の建物の所有者を確認し、建物が会社の名義であるか、被相続人又は相続人の名義であるかを確定してください。この一点によって、採り得る手段が変わります。

相当の地代及び権利金に関する税務上の論点

賃料の額を新たに定め、又は改定する場合には、税務上の取扱いを併せて検討する必要があります。同族会社と個人との間の土地の貸借では、権利金の授受の有無、地代の水準、土地の無償返還に関する届出書の提出の有無によって、法人及び個人の双方の課税関係が変わり得るとされています。

実務上、確認の対象となるのは、過去に権利金の授受があったか、土地の無償返還に関する届出書が税務署長に提出されているか、現在の地代が相当の地代とされる水準に対してどの程度の割合にあるか、という3点です。これらは、相続税の申告における土地の評価にも影響します。

これらの判断は税務の領域に属します。当事務所では、賃料の額及び改定の方法を検討する際に、顧問の税理士又は相続税を取り扱う税理士に確認していただくようお願いしております。法律上の請求として成り立つ額と、税務上望ましい額とが一致しないことがありますので、両面から検討したうえで条件を決めることが安全です。

相続人が複数である場合の請求の方法と根拠条文

相続人が数人あるときは、相続財産はその共有に属します(民法第898条第1項)。各共同相続人は、その相続分に応じて被相続人の権利義務を承継します(民法第899条)。賃借権のように所有権以外の財産権を数人で有する場合には、共有の規定が準用されます(民法第264条)。遺産分割が終わるまでの間は、この遺産共有の状態を前提として請求を組み立てることとなります。

請求の内容によって、必要となる同意の範囲が異なります。時効の完成猶予の措置や、現状を維持するための修繕といった保存行為は、各共有者が単独ですることができます(民法第252条第5項)。賃貸借契約の解除、賃料の額の改定、新たに賃貸をすることといった管理に関する事項は、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決します(民法第252条第1項)。この方法により土地の賃借権等を設定する場合には、5年を超えないものに限られます(民法第252条第4項第2号)。土地の売却のように共有物に変更を加える行為は、他の共有者の同意を得なければすることができません(民法第251条第1項)。

既に生じた賃料の請求については、各相続人が自己の相続分に応じた額を単独で請求することができます。相続人の全員が一括して請求しなければならないわけではありません。もっとも、会社との間で条件を定め直す場面では、相続人ごとに異なる合意が併存すると、その後の管理が煩雑になります。実務上は、相続人の間で方針を確認したうえで、窓口となる者を定めて交渉に当たる方法が円滑です。

相続人の一部が会社の役員又は株主を兼ねている場合には、会社としての判断と相続人としての判断が一致しないことがあります。この場合には、相続人としての意思を書面により明示し、後に同意していたとの主張を受けることのないようにしておく必要があります。

会社が支払う賃料の水準をどのように定めるのか

額を論ずる前に、契約の型を確定します。無償で使用及び収益をし、契約が終了したときに返還をする契約が使用貸借であり(民法第593条)、借主は契約又はその目的に従って使用及び収益をする義務を負います(民法第594条第1項)。賃料の支払を伴うものが賃貸借です(民法第601条)。無償の使用を有償に改めることは、賃料の引上げではなく、従前の使用貸借を合意により終了させ、新たに賃貸借契約を締結することを意味します。いつの時点から切り替わったのかを書面で特定しておかなければ、後日その始期が争われます。

既に賃貸借である場合の額の改定には、地代等増減請求の定めがあります。地代等が、租税その他の公課の増減、土地の価格の変動その他の経済事情の変動により、又は近傍類似の土地の地代等に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって地代等の額の増減を請求することができます(借地借家法第11条第1項)。一定の期間増額しない旨の特約がある場合はその定めに従いますので、契約書を最初に確認してください。この請求は将来に向かって効力を生じ、意思表示が到達した日より前の期間に効果は及びませんので、配達証明付きの内容証明郵便によって行います。

額の根拠として整えるべき資料は、固定資産税及び都市計画税の納税通知書の数年分、公租公課の額と現在の賃料との倍率、並びに近傍類似の土地の地代の事例です。賃貸人は使用及び収益に必要な修繕をする義務を負いますので(民法第606条第1項)、会社が修繕を負担する特約を置くのであれば、その分だけ賃料の水準は低くなります。なお、建物の所有を目的としない駐車場又は資材置場としての賃貸借であれば、その存続期間は50年を超えることができません(民法第604条第1項)。

明渡しを求める場合に必要となる正当の事由

明渡しの可否は、会社が有する権原の型によって決まります。会社が土地の上に自社の建物を所有している場合には借地権の問題となり、更新に対する異議には正当の事由を要します(借地借家法第6条)。相続した建物を会社が使用している場合には、建物の賃貸借の規律により、要件も期限も異なります。まず登記事項証明書によって建物の所有者を確認してください。

期間の定めのある建物の賃貸借では、期間の満了の1年前から6月前までの間に更新をしない旨の通知をしなかったときは、従前の契約と同一の条件で更新したものとみなされ、その期間は定めがないものとなります(借地借家法第26条第1項)。起算点は期間の満了の日ですから、契約書の期間の欄を直ちに確認してください。賃貸人がこの通知又は解約の申入れをするには、正当の事由が必要です(借地借家法第28条)。考慮されるのは、双方が建物の使用を必要とする事情、従前の経過、建物の利用状況及び現況、並びに明渡しと引換えに財産上の給付をする旨の申出であり、立退料は独立の要件ではありません。

会社の使用が無償である場合には、正当の事由は要件となりません。期間を定めたときは、その期間が満了することによって終了します(民法第597条第1項)。期間を定めず、使用及び収益の目的を定めたときであっても、その目的に従い借主が使用及び収益をするのに足りる期間を経過したときは、貸主は契約の解除をすることができます(民法第598条第1項)。使用貸借は借主の死亡によって終了しますが(民法第597条第3項)、貸主の死亡によって終了する旨の定めはありません。借主が会社である以上、先代経営者の死亡のみを理由として終了することはなく、貸主の地位は相続人が承継します。なお、自ら鍵を交換し、電気又は水道の供給を止めることは、いずれの型であっても許されません。

いま確認していただきたいこと

  • 土地・建物の登記事項証明書と遺産分割の状況から、現在の所有者・共有持分を確認してください。
  • 賃貸借契約書・使用貸借契約書・覚書だけでなく、賃料送金、総勘定元帳、申告資料から利用実態を確認してください。
  • 固定資産税、修繕費、保険料、設備投資をこれまで誰が負担してきたか整理してください。
  • 会社がその不動産を失った場合に移転できるか、事業継続への影響を確認してください。
  • 会社又は後継者への売却を検討する場合は、株式・遺産分割・資金調達も同時に確認してください。

よくあるご質問

土地を相続したのだから、会社にすぐ出ていってもらえますか。

会社がどのような権原で使用しているかによります。賃貸借、使用貸借その他の関係を確認してから判断します。

契約書がありません。会社は不法占拠ですか。

契約書がなくても、賃料支払や長年の利用経緯等から契約関係が認められる場合があります。書面の有無だけで断定できません。

固定資産税を私が払っているので、会社に全額請求できますか。

税負担と会社との内部的な費用負担は別です。契約や従前の合意を確認します。

無償で使わせていた土地について、今後は賃料を取りたいです。

今後の契約条件を協議する余地はありますが、既存の使用貸借等の法的関係を確認して進める必要があります。

会社に土地を買い取ってもらえますか。

会社又は後継者と合意できれば売買は可能です。価格、資金、会社側の意思決定、税務上の取扱いを確認します。

後継者が株式、私が会社使用土地を相続しました。公平ですか。

株式と不動産の価値、会社が支払う賃料、将来の負担等を含めて相続全体で検討する必要があります。相続税評価額だけでは判断できない場合があります。

会社をM&Aで売る予定です。土地の契約は整えた方がよいですか。

会社が事業継続に必要な不動産を安定して使用できるかは買い手の重要な確認事項です。契約関係を整理しておくことが有用です。

不動産の共有問題も一緒に相談できますか。

共有者がいる場合には共有関係の整理が別途必要です。本記事は同族会社による使用を中心に扱っており、共有物分割等は個別に検討します。

まとめ

相続した土地・建物を同族会社が使い続けている場合、最初に「会社が何の権利で使っているか」を確認します。その上で、賃料、固定資産税等の負担、契約期間、明渡し、会社又は後継者への売却等を比較します。

特に、後継者が会社株式を取得し、非後継者が会社使用不動産を取得したケースでは、事業承継と遺産分割を別々に処理すると不公平感が残ることがあります。株式・不動産・会社の資金・将来のM&Aを一体として確認することが重要です。

弁護士へのご相談

同族会社による使用の根拠、賃料、固定資産税等の負担、明渡し又は売却を一体として整理したい方からのご相談をお受けしています。

資料がすべて揃っていなくてもご相談いただけます。電話:03-6435-8418(受付時間:8時00分から21時00分まで)。フォームからのお問い合わせは24時間受け付けています。

必ず解決できますから、一緒に頑張りましょう。

出典・参考法令

  • 民法第593条以下(使用貸借)、第601条以下(賃貸借)
  • 民法第896条以下・第898条以下(相続・遺産共有)
  • 土地・建物の賃貸借については、事案により借地借家法の適用関係を確認
  • 不動産登記事項証明書、固定資産税資料、契約書、入出金記録、総勘定元帳、設備投資資料等
  • 借地借家法第2条第1号(借地権の定義)、第3条(借地権の存続期間)、第5条(借地契約の更新請求等)、第6条(借地契約の更新拒絶の要件)
  • 民法第598条第2項(使用貸借の解除)、第617条第1項第1号(期間の定めのない賃貸借の解約の申入れ)
  • 民法第251条第1項(共有物の変更)、第252条第1項・第4項第2号・第5項(共有物の管理)、第264条(準共有)
  • 民法第898条第1項(共同相続の効力)、第899条(共同相続の効力)
  • 会社法第433条第1項(会計帳簿の閲覧等の請求)

具体的なご相談をお考えの皆様へ

本ページの主題に関し、当事務所の取扱内容、対応の進め方及び費用の考え方は、次のご案内のページに整理しています。あわせてご覧ください。