外国人投資家が日本の不動産に投資する利点と欠点及び注意点

この記事の位置付け
外国人による日本の不動産への投資に関するメインのページです。本ページは、不動産の相続や共有をめぐるトラブルに備える視点も含め、投資の利点と欠点を全体からご説明します。購入の手続そのものは別のページをご参照ください。
ここ十数年、アジアの富裕層を中心に、外国人投資家による日本の不動産への投資が目立っております。とりわけ東京では、東京オリンピック・パラリンピック競技大会(令和3年開催)の招致が決まった頃から国際的な注目が集まり、居住用マンションを中心とする投資が活発になりました。
その後も、東京、大阪、京都、福岡、札幌などの都市部に加え、ニセコ、白馬といった観光地においても、外国人による様々な形態の不動産投資が続いております。令和4年以降の円安によって、外貨で見た日本の不動産の価格に割安感が生じたことも、その背景の一つです。
他方で、日本の不動産に投資するということには、外国とは異なる制度上の前提があります。土地と建物とが別個の不動産として扱われること、登記の制度が公信力を有しないこと、そして令和3年の民法及び不動産登記法の改正によって、所有者に新たな義務が課されたことなどです。これらを知らないまま取得しますと、後になって過料の制裁を受けたり、売却の際に思わぬ源泉徴収を受けたりすることがあります。
本記事では、外国人投資家にとっての日本の不動産投資について、メリットとデメリット、物件の探し方、取得までの流れ、必要な費用、非居住者に特有の税務上の取扱い、そして近年の法改正を踏まえた注意点を、順に解説いたします。
外国の不動産と日本の不動産の違い
土地の価格の比重が大きい
外国の不動産と日本の不動産との目立った違いは、価格に占める土地の割合が高いという点です。日本は国土が狭く、そのうち平野の部分はさらに限られております。約1億2,300万人の人口の多くがその限られた平野部に居住しておりますので、土地の価格が高くなります。
このため、同じ一戸建てを購入する場合でも、外国では価格のうち建物の割合が高いことが多いのに対し、日本では土地の割合が高いという特徴があります。また、日本では土地と建物とが別個の不動産として扱われます。土地だけを所有して建物を他人が所有するという状態も生じますので、購入に当たっては、土地と建物の双方の権利関係を確認する必要があります。
建物の価値が経年により下がりやすい
日本では、木造の住宅について、築後20年から25年程度で建物の価値がほとんど評価されなくなるという取引慣行が長く続いてまいりました。近年は既存住宅の流通を促進する施策が進められておりますが、外国に比べて建物の価値が経年により下がりやすいという傾向は依然として残っております。投資の判断に当たっては、建物からの収益と、土地そのものの価値とを分けて考える必要があります。
税制が異なります
不動産に関する税の制度も異なります。国によっては固定資産税、贈与税、相続税が課されないところもありますが、日本では、取得の時に不動産取得税及び登録免許税、保有している間は固定資産税及び都市計画税、譲渡の時は譲渡所得に対する所得税及び住民税が課されます。相続又は贈与によって移転する場合には、相続税又は贈与税も課されます。
なお、しばしば「免許登録税」と誤って呼ばれることがありますが、正しくは登録免許税です。登記の申請に際して課される国税で、所有権の移転の登記の場合、原則として固定資産税評価額の1000分の20です。
登記に公信力がありません
日本の不動産登記には、対抗要件としての効力はありますが、公信力はありません。すなわち、登記の記録を信じて取引をした者が、当然に保護されるわけではありません。真の権利者が別にいた場合、原則として権利を取得することができません。取引に当たっては、登記の記録の確認に加え、売主の本人確認、権利証又は登記識別情報の確認、現地の状況の確認を尽くす必要があります。
外国人投資家が日本の不動産に投資するメリット
外国人投資家が日本の不動産に投資される理由は、他の国の不動産やその他の投資対象と比較して、次のような利点があるからです。
カントリーリスクが低い
日本は、政情が安定しており、私有財産の保護が憲法上保障されております。外国人の土地所有権が政府によって一方的に剥奪されるという事態が想定しにくいという点は、投資先としての大きな安心材料です。国によっては、外国人に土地の所有権を認めず、長期の賃借権のみを認めるところもありますが、日本にはそのような制限がありません。
外国人による取得についての制限がほとんどありません
日本では、外国人であることを理由として不動産の取得を制限する一般的な法律はありません。在留資格の有無も、不動産の取得の要件ではありません。日本に居住していない外国人であっても、日本の不動産を購入し、所有権の登記名義人となることができます。
手続の面でも、原則として日本人が購入する場合と同じです。ただし、印鑑登録証明書に代えて在外公館が発行する署名証明を、住民票に代えて在留証明を用いるなど、書類の面での違いがあります。また、後述のとおり、外国に住所を有する場合には国内における連絡先の登記が必要となります。
為替の水準により割安感があります
令和4年以降、円安が進行いたしました。外貨を保有する投資家から見ますと、同じ物件を従前より少ない外貨で取得することができるという状況が生じ、これが外国人投資家による投資を後押ししました。特に東京の都心部の物件は、ニューヨーク、ロンドン、香港、シンガポールなどの主要都市と比較して、単位面積当たりの価格がなお低い水準にあると評価されることがあります。
もっとも、為替相場は変動するものであり、円高に振れれば同じ効果が逆方向に働きます。為替の水準のみを理由として投資の判断をすることは適切ではありません。
賃貸市場が比較的安定しています
日本の借地借家法は、賃借人の保護が厚い法制です。投資家にとっては賃料の増額や明渡しの請求が容易でないという面がありますが、裏返せば、賃借人が長期にわたって居住し、賃料収入が安定しやすいという面もあります。都市部においては空室率も比較的低い水準で推移しております。
外国人投資家が日本の不動産に投資するデメリット
立地による格差が大きい
日本の不動産は、立地によって収益性と流動性が大きく異なります。都市部の駅に近い物件は賃借人を確保しやすい一方、地方の物件は、価格が安いという理由だけで取得しますと、賃借人が見つからず、売却も困難という事態に陥ることがあります。遠隔地から状況を把握しにくい外国人投資家にとっては、特に注意を要する点です。
人口が減少し、少子高齢化が進行しています
日本の人口は減少局面にあり、少子高齢化が急速に進行しております。長期的には住宅の需要が縮小する方向に働きます。もっとも、世帯数の減少は人口の減少より緩やかであり、また東京圏への人口の集中は続いております。全国一律に需要が減少するわけではありませんので、地域ごとの動向を個別に検討する必要があります。
為替の変動
円建てで収益を得る以上、外貨に換算した際の利回りは為替相場の影響を受けます。円安の局面で取得し、円高の局面で売却すれば為替差益が生じますが、逆であれば為替差損が生じます。賃料収入についても、外貨に換算した金額は毎年変動します。
遠隔地からの管理の負担
外国に居住したまま日本の不動産を保有する場合、賃借人の募集、賃料の収受、建物の修繕、近隣との対応などを自ら行うことは困難です。管理会社に委託することとなりますが、管理会社の質によって投資の成否が左右されます。委託先の選定は、物件の選定と同じ程度に重要です。
外国人の不動産取得に関する規制の動向
重要施設の周辺及び国境離島等における規制
外国人による取得を一般的に制限する法律はありませんが、安全保障の観点から、重要施設周辺及び国境離島等における土地等の調査及び利用の規制等に関する法律が令和4年9月に全面施行されております。
この法律により、自衛隊の施設、海上保安庁の施設、原子力関係施設などの周囲おおむね1,000メートルの区域及び国境離島等が注視区域として指定され、そのうち特に重要なものが特別注視区域として指定されます。特別注視区域内にある一定面積以上の土地又は建物の売買契約を締結する場合には、当事者双方が事前に内閣総理大臣に届け出る必要があります。届出を怠った場合には罰則があります。
投資の対象とする物件が注視区域又は特別注視区域に所在するかどうかは、内閣府が公表する区域の一覧によって確認することができます。取得の前に必ず確認すべき事項です。
制度の見直しに関する議論
近年、外国人及び外国法人による土地の取得について、取得の状況を把握する仕組みや、一定の区域における取得を制限する仕組みを設けるべきであるという議論が行われております。政府においても検討が進められておりますので、今後、届出又は許可を要する範囲が拡大する可能性があります。長期の保有を予定される場合には、制度の動向を継続して確認していただく必要があります。
近年の法改正で押さえておくべき事項
令和3年に民法及び不動産登記法が改正され、所有者不明土地の発生を予防し、既に発生している所有者不明土地を利用しやすくするための制度が順次施行されました。外国人投資家にも直接に関係する内容を含んでおりますので、要点を整理いたします。
相続登記の申請が義務化されました
令和6年4月1日から、相続によって不動産の所有権を取得した者は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、その所有権を取得したことを知った日から3年以内に、相続の登記を申請しなければならないこととされました(不動産登記法第76条の2)。正当な理由がないのにこれを怠った場合には、10万円以下の過料の対象となります。
この義務は、令和6年4月1日より前に発生していた相続にも適用されます。この場合の期限は、令和9年3月31日又は所有権の取得を知った日から3年以内のいずれか遅い日です。日本の不動産を保有される方が亡くなり、外国に居住する相続人が承継される場合にも、この義務が及びます。
すぐに遺産分割が調わない場合には、相続人申告登記(不動産登記法第76条の3)という簡易な手続によって、ひとまず義務を履行することができます。
住所等の変更の登記が義務化されました
令和8年4月1日から、所有権の登記名義人は、その氏名若しくは名称又は住所に変更があったときは、変更があった日から2年以内に変更の登記を申請しなければならないこととされました(不動産登記法第76条の5)。正当な理由がないのにこれを怠った場合には、5万円以下の過料の対象となります。
外国に居住される投資家は、転居の頻度が高い場合があります。日本の不動産を保有したまま住所を変更した場合には、2年以内に登記を変更する必要がありますので、管理会社又は代理人と情報を共有しておく必要があります。
国内に住所を有しない登記名義人には国内連絡先の登記が必要です
令和6年4月1日から、所有権の登記名義人が国内に住所を有しないときは、その国内における連絡先となる者の氏名又は名称及び住所等を登記事項とすることとされました(不動産登記法第73条の2第1項第2号)。国内の連絡先となる者がない場合には、その旨を登記します。
これは、外国に居住する所有者と連絡が取れないことによって生じる問題に対処するための制度です。外国人投資家が日本の不動産を取得される場合には、管理会社、弁護士、司法書士などを国内連絡先として定めておくことが実務上望ましい対応です。
相続土地国庫帰属制度が創設されました
令和5年4月27日から、相続又は遺贈によって土地の所有権を取得した者が、一定の要件を満たす場合に、法務大臣の承認を受けてその土地の所有権を国庫に帰属させることができる制度が始まりました(相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律)。
建物が存在しないこと、担保権等が設定されていないこと、通路その他の他人による使用が予定されていないこと、土壌汚染がないことなどの要件があり、承認を受けた場合には10年分の土地の管理費用に相当する負担金を納付する必要があります。売却も利用もできない土地を承継してしまった場合の出口の一つとして、把握しておくべき制度です。
共有及び相隣関係に関する民法の規定が改正されました
令和5年4月1日から、共有物の管理及び変更に関する規律が見直され、所在等が不明な共有者がいる場合であっても、裁判所の決定を得て共有物の管理及び変更を行うことができるようになりました。また、所在等不明共有者の持分を取得し、又は第三者に譲渡することができる制度も設けられました。
相隣関係につきましても、隣地を使用することができる場合の明確化、ライフラインの設備を設置するために他人の土地を使用することができる権利、越境した竹木の枝を自ら切り取ることができる場合の規定が整備されました。複数名で共有して日本の不動産に投資される場合には、これらの規律を理解しておく必要があります。
あわせて、相続の開始から10年を経過した後にする遺産分割は、原則として法定相続分によることとされました(民法第904条の3)。相続によって不動産を取得される場合には、この期間を意識しておく必要があります。
外国人投資家が日本の不動産を探す方法
インターネットで探す
不動産の情報を掲載する事業者の中には、英語、中国語その他の言語に対応し、外国人投資家による投資を前提とした頁を用意しているところが増えております。外国に居住したまま、日本の物件を検索することができます。
ただし、掲載されている情報は物件の一部にすぎず、また賃料の想定や利回りの表示は事業者による見込みにすぎません。実際の収支は、管理費、修繕積立金、固定資産税、管理委託費用、空室の期間を反映して計算し直す必要があります。
不動産会社で探す
外国人投資家に対応する不動産会社は年々増えております。不動産会社は情報と経験を有しており、外国人であっても日本人と同じ手続によって取得することができますので、有力な選択肢です。
もっとも、外国語による対応が可能であるか、外国人投資家にとって必要な説明を的確に行うことができるかは、会社によって差があります。また、取得後の管理まで同じ会社に委託する場合には、その会社の管理体制が投資の成果を大きく左右します。空室を長く放置せず、適切に賃借人を確保することができる会社を選ぶ必要があります。
なお、日本では、宅地建物取引業者は、契約の締結の前に宅地建物取引士による重要事項の説明を行う義務を負います(宅地建物取引業法第35条)。この説明は、物件の権利関係、法令上の制限、インフラの整備状況、契約の解除に関する事項などを網羅した重要なものです。内容を理解しないまま署名することのないよう、必要であれば通訳又は日本の弁護士を同席させてください。
弁護士などに紹介してもらう
日本の不動産の取得は、日本の法律に従って行われます。手続そのものは日本人が購入する場合と変わりませんが、外国の制度と異なる部分が多くありますので、法律の専門家を通じて物件を探すという方法も有効です。
また、裁判所の競売の手続によって売却される物件は、一般に流通している物件より安く取得することができる場合があります。もっとも、内覧をすることができない、占有者がいる場合の引渡しに手間を要する、瑕疵担保の責任の追及ができないなどの特有の問題がありますので、弁護士に依頼して手続を進めることが安全です。
外国人投資家が日本の不動産に投資するまでの流れ
外国に居住される投資家が日本の不動産を取得されるまでの流れは、おおむね次のとおりです。
第1に、投資の対象とする不動産を探し、不動産会社又は弁護士と連絡を取ります。この段階で、投資の目的、予算、想定する利回り、保有の期間を明確にしておきます。
第2に、日本を訪問し、対象物件の下見を行います。写真と図面だけでは、周辺の環境、日照、騒音、建物の劣化の状況を把握することができません。可能な限り現地を確認していただくことをお勧めいたします。
第3に、買付証明書を提出します。購入の意思と希望する条件を示す書面です。法的な拘束力を有しないのが通常ですが、売主との交渉の出発点となります。
第4に、売買契約を締結します。重要事項の説明を受けたうえで契約書に署名し、手付金を支払います。契約書及び重要事項説明書は日本語で作成されますので、内容を正確に理解したうえで署名してください。
第5に、購入資金を準備します。外国から送金する場合には、金融機関における取引時確認に時間を要することがあります。犯罪による収益の移転防止に関する法律に基づき、資金の出所に関する説明を求められることもありますので、余裕をもって準備してください。
第6に、代金を決済し、物件の引渡しを受けます。同時に所有権の移転の登記を申請します。司法書士が立ち会って手続を行うのが通例です。
第7に、管理会社と管理委託契約を締結します。外国に居住したまま保有される場合には、この契約が投資の成否を左右します。
外国人投資家が日本の不動産投資で必要な費用
取得の時に必要な費用
売買代金のほかに、次の費用が必要となります。
| 費目 | 内容 |
| 仲介手数料 | 不動産会社に支払います。売買代金が400万円を超える場合、代金の3パーセントに6万円を加えた額に消費税を加えた額が上限です |
| 印紙税 | 売買契約書に貼付します。不動産の譲渡に関する契約書には令和9年3月31日まで軽減の措置があります |
| 不動産取得税 | 取得の後に都道府県から課されます。原則として固定資産税評価額の4パーセント(住宅及び土地については軽減の措置があります) |
| 登録免許税 | 所有権の移転の登記に際して課されます。売買による移転の場合、原則として固定資産税評価額の1000分の20 |
| 司法書士の報酬 | 登記の申請の代理に対する報酬 |
| 損害保険料 | 火災保険及び地震保険を付保する場合の保険料 |
これらの合計は、物件の種類及び築年数によりますが、おおむね売買代金の6パーセントから9パーセント程度となることが多くあります。自己資金の計画を立てる際には、この分を見込んでおく必要があります。
保有している間に必要な費用
固定資産税及び都市計画税(不動産の所在する市町村に納付します)、賃貸によって収益を得ている場合の所得税及び住民税、区分所有の建物における管理費及び修繕積立金、管理会社に支払う賃貸管理の委託費用、修繕に要する費用が必要となります。
固定資産税は、その年の1月1日における所有者に対して課されます。年の途中で取得した場合、売主との間で日割りによって精算するのが取引の慣行ですが、これは当事者間の取決めであって、納税義務者は1月1日の所有者です。
売却の時に必要な費用
売買契約書の印紙税、仲介手数料、譲渡によって利益が生じた場合の譲渡所得に対する所得税及び住民税、抵当権が設定されている場合の抹消の登記の費用が必要となります。
譲渡所得に対する税率は、所有の期間が5年を超える場合(長期譲渡所得)は所得税15パーセント及び住民税5パーセント、5年以下の場合(短期譲渡所得)は所得税30パーセント及び住民税9パーセントです。これに復興特別所得税が加算されます。保有の期間が5年を超えるかどうかで税率が大きく変わりますので、売却の時期の判断に当たっては必ず確認してください。なお、期間の判定は譲渡をした年の1月1日を基準としますので、実際の保有期間より短く判定されることがあります。
非居住者に特有の税務上の取扱い
日本に住所を有しない個人は、所得税法上の非居住者に当たります。非居住者が日本の不動産から収益を得る場合には、居住者とは異なる取扱いがありますので、必ず把握しておいてください。
賃料に対する源泉徴収
非居住者が日本国内の不動産を賃貸して賃料を受け取る場合、賃借人は、賃料を支払う際に20.42パーセントを源泉徴収して国に納付する義務を負います(所得税法第212条第1項)。ただし、賃借人が個人であって、自己又はその親族の居住の用に供するために借りている場合は除かれます。
源泉徴収された税額は、確定申告によって精算されます。手取りの賃料が想定より少なくなりますので、収支の計画を立てる際には、この点を織り込んでおく必要があります。
譲渡の対価に対する源泉徴収
非居住者が日本国内の不動産を譲渡する場合、買主は、譲渡の対価を支払う際に10.21パーセントを源泉徴収して国に納付する義務を負います。ただし、譲渡の対価が1億円以下であって、かつ、買主が個人で自己又はその親族の居住の用に供するために取得する場合は除かれます。
この源泉徴収も、確定申告によって精算されます。売却の代金の全額がそのまま手元に入るわけではありませんので、資金の計画に注意を要します。
納税管理人の届出
日本に住所を有しない者が日本で納税義務を負う場合には、納税管理人を定めて所轄の税務署長に届け出る必要があります(国税通則法第117条)。納税管理人は、申告書の提出、納付、還付金の受領などを本人に代わって行います。届出がない場合には、税務署長が納税管理人を指定することができる制度も設けられております。取得の段階で、税理士等を納税管理人として定めておくことをお勧めいたします。
外国人投資家が日本の不動産に投資する時の注意点
登記識別情報通知を必ず受け取ってください
登記識別情報通知は、かつて権利証(登記済証)と呼ばれていた書類に代わるもので、登記の申請の際に本人であることを確認するために用いられます。所有権の移転の登記が完了した際に法務局から交付されますので、必ず受け取り、厳重に保管してください。
前述のとおり、日本の登記には公信力がありませんが、二重に売買がされた場合には、先に登記を備えた者が所有権を主張することができます(民法第177条)。登記を確実に備え、その証となる登記識別情報通知を保管しておくことが重要です。
実務上は、投資家ご本人が受け取るか、管理を委託する会社又は代理人が受け取ることになります。再発行はされませんので、紛失した場合には、司法書士による本人確認情報の作成など、別の手続と費用を要します。
税金を必ず納付してください
固定資産税及び都市計画税は、毎年、市町村から納税通知書が送付されます。外国に居住しておりますと通知が届かないことがありますので、管理会社又は納税管理人を送付先として指定しておく必要があります。滞納しますと延滞金が課され、最終的には不動産が差し押さえられることもあります。
物件の状況をこまめに確認してください
外国に居住したまま日本の不動産を保有される場合、建物の劣化、賃借人の入替え、近隣との紛争などの状況を自ら把握することが困難です。管理会社から定期的に報告を受ける体制を整え、年に1度は現地を確認していただくことをお勧めいたします。
取引時確認に応じる必要があります
不動産の売買に際しては、宅地建物取引業者及び金融機関が、犯罪による収益の移転防止に関する法律に基づいて取引時確認を行います。本人確認の書類、取引の目的、資金の出所などについて説明を求められます。外国からの送金については確認に時間を要することがありますので、決済の日程には余裕を見てください。
相続が発生した場合に備えてください
外国人投資家が日本の不動産を保有したまま亡くなった場合、その相続は国際相続の問題となります。日本に所在する不動産についてどの国の法律が適用されるかは、被相続人の本国法とその国の国際私法の内容によって決まります。相続人が外国に居住している場合には、署名証明及び在留証明の取得、相続登記の申請の義務など、多くの手続を要します。
この点につきましては、国際相続(渉外相続)の準拠法と手続 海外資産・非上場株式を含む相続の実務において詳しく解説しておりますので、あわせてご覧ください。
外国人投資家が日本の不動産を取得される前に確認すべき事項
第1に、対象物件が重要施設の周辺又は国境離島等の注視区域に所在しないかどうか。第2に、土地と建物の権利関係、及び登記の記録と実態との一致。第3に、取得に要する諸費用(売買代金のおおむね6パーセントから9パーセント)。第4に、非居住者としての源泉徴収の取扱いと納税管理人の選任。第5に、国内連絡先として登記する者の選定。第6に、管理を委託する会社の体制。第7に、将来の相続に備えた準拠法の確認です。
まとめ
日本の不動産は、外国人であっても原則として制限なく取得することができ、政情も安定しており、投資の対象として一定の魅力を有しております。円安の局面においては、外貨で見た割安感も生じます。
他方で、立地による格差の大きさ、人口の減少、為替の変動、遠隔地からの管理の難しさという課題があり、また、令和3年の民法及び不動産登記法の改正によって、相続登記及び住所等の変更の登記の申請が義務となり、国内に住所を有しない登記名義人には国内連絡先の登記が求められることとなりました。取得の前に、これらの制度を正しく理解しておく必要があります。
当事務所は、不動産に関する紛争及び不動産の相続を数多く取り扱っており、外国に居住される方からのご相談にも対応しております。物件の取得に関する法律上の確認、契約書の審査、取得後の管理に関する紛争、そして将来の相続に備えた検討まで、一体としてご相談をお受けいたします。日本の不動産への投資をご検討の方は、お早めにご相談ください。
具体的なご相談をお考えの皆様へ
本ページの主題に関し、当事務所の取扱内容、対応の進め方及び費用の考え方は、次のご案内のページに整理しています。あわせてご覧ください。



