共有物分割の場面で共有減価は考慮されるのか 共有持分のみを売却する場合の価格との違いと、争い方
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▶ 共有不動産の紛争を弁護士に依頼するとき 共有持分の買取り、分割及び明渡しの進め方
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共有持分を業者に売ろうとしたところ、不動産全体の価格に持分の割合を乗じた額より、はるかに低い金額を提示された。その理由として、共有であることによる減価があると説明された。では、共有物分割の訴訟になった場合にも、同じ減価がされるのか。共有不動産のご相談では、この点の理解が結論を大きく分けます。
結論から申し上げます。共有であることによる減価は、共有持分のみを第三者へ売却する場面で生ずるものであって、共有物分割によって共有関係そのものが解消される場面には、そのまま持ち込むべきものではありません。
共有持分のみを取得した者は、単独で使用することも処分することもできません。この制約が価格に反映されて減価が生じます。これに対し、共有物分割によって共有者の一人が不動産の全部を取得すれば、制約は消滅します。制約が消える場面で、制約を理由とする減価を主張することは、筋が通りません。
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不動産の価格は、何のために求めるのかによって前提が変わります。
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共有であることによる減価は、どこから生ずるのか
各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができます(民法第249条第1項)。しかし、共有持分のみを取得した者にできることは、限られています。
第一に、単独で使用することができません。他の共有者が現に使用している場合、当然にはその明渡しを請求することができないと解されています(最高裁判所昭和41年5月19日大法廷判決)。
第二に、共有物に変更を加えるには、他の共有者の同意が必要です(民法第251条第1項)。管理に関する事項も、持分の価格の過半数によって決しますので(民法第252条第1項)、少数の持分では単独で決することができません。
第三に、不動産全体を売却するには、共有者の全員が売主となる必要があります。
これらの制約があるために、共有持分のみを買い受けようとする者は限られ、市場が狭くなります。この市場の狭さが、価格に反映されます。共有持分の取引において減価が生ずる理由は、ここにあります。
共有物分割の場面では、前提が異なります
共有物分割は、共有関係そのものを終わらせる手続です。裁判所は、共有物の現物を分割する方法、又は共有者に債務を負担させて他の共有者の持分の全部若しくは一部を取得させる方法により、共有物の分割を命ずることができ(民法第258条第2項)、これらの方法によることができないとき等は、その競売を命ずることができます(同条第3項)。
いずれの方法によっても、手続が完了した時点では、共有関係は解消されています。現物による分割であれば各共有者が単独の所有者となり、賠償による分割であれば取得する共有者が単独の所有者となり、競売であれば買受人が単独の所有者となります。
したがって、共有物分割における評価の基礎となるのは、共有関係が解消された後の状態、すなわち不動産全体の価格です。これに持分の割合を乗じた額が、各共有者の取り分の出発点になります。
全面的価格賠償における「適正な評価」の意味
共有者の一人に共有物を取得させ、他の共有者にその持分の価格を賠償させる方法について、最高裁判所平成8年10月31日第一小法廷判決は、共有物を共有者のうちの特定の者に取得させるのが相当であると認められ、かつ、その価格が適正に評価され、当該共有物を取得する者に支払能力があって、他の共有者にはその持分の価格を取得させることとしても共有者間の実質的公平を害しないと認められる特段の事情があるときは、この方法によることも許されるとしています。
ここでいう「その価格が適正に評価され」とは、取得しない共有者が受け取る金銭が、その持分に見合うものであることを意味します。不動産全体の価格を基礎とせず、共有持分のみを第三者に売る場合の水準によって算定しますと、取得する共有者だけが利益を得ることになり、共有者間の実質的公平を害します。
したがって、賠償による分割を求める側も、これに応ずる側も、不動産全体の価格を確定させることに主眼を置きます。
鑑定評価における価格の種類
不動産鑑定評価基準は、求める価格の種類として、正常価格、限定価格、特定価格及び特殊価格を定めています。
正常価格とは、市場性を有する不動産について、現実の社会経済情勢の下で合理的と考えられる条件を満たす市場で形成されるであろう市場価値を表示する適正な価格をいいます。
限定価格とは、市場性を有する不動産について、不動産と取得する他の不動産との併合又は不動産の一部を取得する際の分割等に基づき、正常価格と同一の市場概念の下において形成されるであろう市場価値と乖離することにより、市場が相対的に限定される場合における取得部分の当該市場限定に基づく市場価値を適正に表示する価格をいいます。同基準は、限定価格を求める場合として、借地権者が底地の併合を目的とする売買に関連する場合、隣接不動産の併合を目的とする売買に関連する場合、経済合理性に反する不動産の分割を前提とする売買に関連する場合の三つを例示しています。
共有持分の取得は、同基準が明示的に例示する類型には含まれていないと理解しております。もっとも、他の共有者が共有持分を取得する場合には、取得によって単独の所有に近づくという併合の利益が生じますので、この考え方が参照されることがあります。鑑定を求める場合には、いかなる価格の種類を求めるのかを、あらかじめ明確にしておく必要があります。
鑑定人の評価に減価が含まれていた場合の争い方
裁判所が選任した鑑定人の評価書に、共有であることを理由とする減価が織り込まれていることがあります。この場合には、次の順序で確認します。
第一に、鑑定の対象を確認します。不動産全体の価格を求めたのか、共有持分の価格を求めたのかによって、当然に結論が異なります。鑑定の事項をどう設定したかが、そもそもの出発点になります。
第二に、価格の種類を確認します。正常価格を求めたのか、限定価格を求めたのかを確かめます。
第三に、減価の根拠を確認します。共有であることによる制約を理由とするのであれば、分割によってその制約が消滅することとの整合性を問います。
第四に、必要に応じて、鑑定人に対する釈明を求め、あるいは私的な鑑定意見書を提出します。評価に対する反論は、感想ではなく、鑑定の手法と前提条件に対する具体的な指摘によって行います。
競売による分割の場合の価格
競売が命じられた場合には、不動産は裁判所の手続により売却されます。この場合に売却されるのは共有持分ではなく不動産の全部ですので、共有であることによる減価は問題となりません。
もっとも、競売という手続そのものによる価格の低下は生じます。買受けの申出は、売却基準価額からその10分の2に相当する額を控除した額以上でなければすることができません(民事執行法第60条第3項)。内覧の機会も限られ、引渡しについての交渉の余地もありません。したがって、共有であることによる減価は避けられても、市場での売却に比べれば代金の額は下がります。
放置した場合に失われるもの
第一に、評価の前提を設定する機会です。鑑定が実施された後で対象や価格の種類を争うことは、実際上、困難です。鑑定の申出をする段階で、鑑定の事項を的確に設定する必要があります。
第二に、資料を収集する機会です。近隣の取引事例、賃料の水準、修繕の履歴は、時間の経過とともに集めにくくなります。
第三に、価格の水準そのものです。建物の劣化が進めば、いずれの評価によっても価格は下がります。
相手方が減価を主張する理由
第一に、取得する側が代償金を抑えたい場合です。共有であることによる減価を主張することによって、支払う金額を下げようとします。
第二に、共有持分買取業者が取得原価を基礎とする主張をする場合です。業者は共有持分のみの水準で取得していますので、その水準を前提とした議論に持ち込もうとします。
第三に、評価の方法についての理解が共有されていない場合です。この場合には、対立というより誤解ですので、評価の対象と価格の種類を整理して示すことで合意に至ることがあります。
評価の基準となる時点
不動産の価格は、時点によって変動します。したがって、いつの時点の価格によるのかを定めなければ、金額を確定させることができません。
共有物分割の訴訟においては、事実審の口頭弁論が終結する時の価格を基礎とするのが原則であると理解しております。訴えの提起から判決までに相当の期間を要する場合には、その間の価格の変動が結論に影響します。
これに対し、遺産分割においては、相続開始の時と分割の時の二つの時点が問題となります。相続分の算定においては相続開始の時の価額により、現実の分割においては分割の時の価額によるものと整理されています。共有物分割と遺産分割とでは、基準となる時点の考え方が異なりますので、いずれの手続によるのかを確定させることが先になります。
いま確認していただきたいこと
1 提示されている金額が、不動産全体の価格を基礎としているのか、共有持分のみの水準によっているのかを確認してください。
2 複数の宅地建物取引業者から査定を取得し、不動産全体の価格の幅を把握してください。
3 相続税の申告をしている場合には、申告書に添付された評価の明細を確認してください。相続税評価額は課税のための価額であり、市場での売買価格とは一致しませんが、参考になります。
4 鑑定が予定されている場合には、鑑定の事項と価格の種類について、あらかじめ主張を整理してください。
よくあるご質問
共有持分は不動産全体の価格の何割になりますか。
一律の割合はありません。持分の割合、他の共有者の数と関係、使用の状況、建物の有無によって異なります。共有物分割の場面では、そもそも不動産全体の価格を基礎としますので、割合という考え方をいたしません。
業者が提示した金額を、共有物分割の訴訟で持ち出されませんか。
持ち出されることがあります。もっとも、共有持分のみの取引の水準と、共有関係が解消される場面の評価とは前提が異なりますので、その旨を説明して反論いたします。
鑑定を求めるべきでしょうか。
争いが価格に集中している場合には、鑑定を求める意味があります。鑑定料の予納が必要であり、鑑定の後に和解をしても戻りませんので、当事者の見込みの隔たりの大きさを踏まえて判断いたします。
相続税評価額を基準にできますか。
相続税評価額は課税のために定められた価額であり、市場での売買価格とは一致しません。目安として用いることはできますが、これのみを基準として代償金を定めることは適切でない場合があります。
建物が古く、価値がないと言われました。
建物の価値と土地の価値は別に評価されます。建物に価値がないとしても、土地の価格は残ります。解体の費用を控除すべきかどうかも含め、評価の内訳を確認してください。
おわりに
共有であることによる減価は、共有持分のみを売る場面の話です。共有関係を解消する場面にこれを持ち込まれますと、受け取るべき金額を大きく下回る結果になります。提示された金額の根拠がどちらの前提によっているかを確かめることが、最初の一歩です。査定書と登記事項証明書をご用意のうえ、ご相談ください。必ず解決できますから、一緒に頑張りましょう。
共有不動産の評価と共有減価に関するご相談
弁護士法人M&A総合法律事務所 電話番号 03-6435-8418
受付時間 8:00-21:00(土日祝含む)
出典及び参照した法令
民法第249条第1項、第251条第1項、第252条第1項、第258条第2項及び第3項
民事執行法第60条第3項
不動産鑑定評価基準(国土交通省。平成14年7月3日全部改正、平成26年5月1日一部改正)
最高裁判所昭和41年5月19日大法廷判決(共有者の一人が共有物を単独で占有する場合の明渡請求)
最高裁判所平成8年10月31日第一小法廷判決(全面的価格賠償による共有物分割の要件)
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