共有持分買取業者が敷地や建物に立ち入ろうとするとき 共有者の使用の権利と拒むことができる範囲
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▶ 共有不動産の紛争を弁護士に依頼するとき 共有持分の買取り、分割及び明渡しの進め方
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他の共有者が共有持分を業者に売却した。その業者から、現地を確認したい、建物の中を見せてほしい、鍵を渡してほしいという連絡が来ている。応じなければならないのか。断ってよいのか。共有持分買取業者が関与するご相談では、この問いを頂くことが増えています。
結論から申し上げます。業者も共有者である以上、共有物の全部について持分に応じた使用をする権利を有しますが、ご自身が現に居住し、又は使用している建物に無断で立ち入ることまで認められるものではありません。鍵を渡す義務もありません。
他方、業者を一切近づけないという対応も、法律上の根拠を欠くことがあります。拒むことができる範囲と、拒むことができない範囲とを区別し、書面によって条件を定めたうえで応ずる方が、紛争を長引かせません。
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共有持分買取業者との紛争は、業者が何を求めてきているかによって対応が分かれます。
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共有者は、共有物の全部について持分に応じた使用をすることができます
各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができます(民法第249条第1項)。持分の割合が小さくても、使用の対象が不動産の一部に限られるわけではありません。業者が共有持分を取得した場合、業者もこの権利を有します。
もっとも、この規定は、共有者の一人が他の共有者を排除して単独で使用することを認めるものではありません。共有者は、善良な管理者の注意をもって、共有物の使用をしなければなりません(民法第249条第3項)。
そして、共有者の一人が共有物を単独で占有している場合において、他の共有者は、当然にはその明渡しを請求することができないと解されています(最高裁判所昭和41年5月19日大法廷判決)。すなわち、業者は、ご自身が居住している建物について、当然に明渡しを求めることも、当然に立ち入ることもできません。
無断で立ち入られた場合に採り得る手段
ご自身が現に居住し、又は施錠して管理している建物に、業者が無断で立ち入った場合には、次の対応を検討します。
第一に、占有に対する妨害の排除及び妨害の予防の請求です。占有者がその占有を妨害されたときは、占有保持の訴えにより、その妨害の停止及び損害の賠償を請求することができます(民法第198条)。占有を妨害されるおそれがあるときは、占有保全の訴えにより、その妨害の予防又は損害賠償の担保を請求することができます(民法第199条)。
第二に、民事保全の手続です。判決を待っていては目的を達することができない場合には、仮処分命令の申立てを検討します(民事保全法第23条第1項)。
第三に、刑事上の問題です。正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入した者は、住居侵入等の罪に問われます(刑法第130条)。共有者であることが直ちに正当な理由に当たるとは限らず、他の共有者が平穏に占有している住居への無断の立入りについては、可罰性が問題となり得ます。個別の事案における評価は、立入りの態様、目的、事前の連絡の有無によって異なります。
第四に、記録の保存です。立入りの日時、態様、同行者、やり取りの内容を記録し、可能であれば防犯カメラの映像、写真を保存してください。
鍵を渡す義務はありません
共有者であることから直ちに、他の共有者に対して鍵を交付する義務が生ずるものではありません。
共有物の管理に関する事項は、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決します(民法第252条第1項)。共有物を使用する共有者があるときも同様です(同項後段)。したがって、誰が建物を使用するのか、鍵をどのように管理するのかは、持分の価格の過半数によって決すべき事項です。
業者の持分が過半数に満たないのであれば、業者が単独でこれを決することはできません。逆に、業者が過半数の持分を取得している場合には、管理に関する事項を決することができますので、対応の組み立て方が変わります。まず持分の割合を確認してください。
なお、共有者間の決定に基づいて共有物を使用する共有者に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければなりません(民法第252条第3項)。長年にわたり居住してきた共有者を退去させる内容の決定については、この規定による制約があります。
敷地と建物とで、扱いが分かれます
建物が存する土地について、業者が現況を確認するために敷地に立ち入ることと、建物の内部に立ち入ることとは、区別して考えます。
塀で囲まれ、門扉が施錠されている敷地は、建物と一体として管理されている場所と評価されます。これに対し、囲いのない空地であれば、共有者としての使用の範囲内と評価される余地が広くなります。
また、土地の共有持分のみを取得した業者と、建物の共有持分も取得した業者とでは、立場が異なります。登記事項証明書を土地と建物の双方について取得し、業者がいずれの持分を取得しているのかを確認してください。土地の持分のみを取得した業者は、建物についての権利を有しません。
条件を定めて応ずるという選択
一切の立入りを拒む対応は、法律上の根拠を欠く場合があるほか、業者に共有物分割の訴えを提起する口実を与えることがあります。実務上は、次の条件を定めたうえで、限定的に応ずる方が結果的に有利になります。
第一に、日時をあらかじめ書面で定めることです。突然の訪問には応じない旨を明確にします。
第二に、立ち会う者を定めることです。ご自身又は代理人が必ず立ち会うこととし、単独での立入りは認めません。
第三に、範囲を限定することです。敷地及び外観の確認にとどめるのか、建物の内部を含むのかを定めます。
第四に、撮影の可否を定めることです。撮影を認める場合であっても、用途を現況の確認に限り、広告その他への使用を禁ずる旨を定めます。
第五に、やり取りを書面に一本化することです。電話での交渉は記録が残らず、後から言った言わないの争いになります。連絡は書面又は電子メールに限る旨を、初期の段階で通知します。
使用の対価を請求されている場合との関係
業者が立入りを求める場面では、同時に、共有持分に応じた使用の対価を請求されていることが少なくありません。
共有者は、別段の合意がある場合を除き、他の共有者に対し、自己の持分を超える使用の対価を償還する義務を負います(民法第249条第2項)。もっとも、その額は、不動産全体の賃料相当額に持分の割合を乗じて機械的に算定されるものではなく、使用の経緯、無償で使用する旨の合意の有無、相続の前後の事情を踏まえて判断されます。
また、被相続人と同居していた相続人については、遺産分割が終了するまでの間、使用貸借の合意が推認されるとする考え方があり、これによる場合には対価の請求が制限されます。立入りの問題と対価の問題は、いずれも「誰がどのような経緯で使用してきたか」という同じ事実関係に基づいて判断されますので、経緯を整理した書面を早期に作成しておくことが有効です。
賃借人や近隣に対する接触への対応
共有する建物に賃借人が入居している場合、業者が賃借人に直接連絡を取り、賃料の支払先を自らに変更するよう求めることがあります。
賃料は共有物から生ずる果実であり、各共有者はその持分の割合に応じて取得します。もっとも、賃貸借に関する事務、すなわち賃料の受領の方法や管理を行う者の決定は、共有物の管理に関する事項として持分の価格の過半数によって決すべき事項です(民法第252条第1項)。業者が単独でこれを変更することはできません。
賃借人は、共有者の間の紛争に巻き込まれる立場にありますので、賃借人に対しては、共有者の間で整理がつくまでの取扱いを、書面によって明確に通知します。賃借人が誰に支払えばよいか分からない状態が続きますと、賃料が供託され、あるいは支払が止まります。
近隣の住民に対して業者が接触し、建物の状況や居住者の事情を尋ねる例もあります。この場合には、事実に反する説明がされていないかを確認し、必要に応じて書面により中止を申し入れます。
放置した場合に失われるもの
第一に、占有の事実です。立入りを繰り返し受け入れているうちに、単独で占有している状態でなくなったと評価される余地が生じます。
第二に、証拠です。立入りの態様に問題があった場合の記録は、時間が経つと再現できません。
第三に、使用の対価に関する主張の機会です。無償で使用する旨の合意があったことを基礎付ける事情は、当事者の記憶と当時の資料に依存します。関係者が高齢である事案では、早期の聴取が必要になります。
第四に、交渉の主導権です。条件を定めないまま個別の求めに応じ続けますと、以後の求めを断る理由を失います。
業者が立入りを求める理由
第一に、担保としての価値、転売の可能性を評価するためです。現況を確認しなければ、価格の提示ができません。
第二に、交渉を有利に進めるためです。立入りを拒まれた事実を、共有物分割の訴訟における主張の材料としようとすることがあります。
第三に、心理的な圧力をかけるためです。この目的による場合には、書面による条件の設定が最も有効な対応になります。条件を定めれば、応じないことの理由が明確になります。
いま確認していただきたいこと
1 土地及び建物の双方について登記事項証明書を取得し、業者が取得した持分の対象と割合を確認してください。
2 業者から届いた書面を日付順に整理し、求められている内容を確認してください。
3 施錠の状況、防犯設備の有無を確認してください。占有の状態を示す事実になります。
4 いつから、どのような経緯でご自身が使用してきたかを、時系列で書き出してください。使用の対価に関する主張の基礎になります。
よくあるご質問
業者が突然訪ねてきました。中に入れなければなりませんか。
入れる義務はありません。共有者の一人が共有物を単独で占有している場合、他の共有者は当然にはその明渡しを請求することができないと解されています(最高裁判所昭和41年5月19日大法廷判決)。日時と条件を書面で定めるよう求めてください。
鍵の引渡しを求められています。応じなければなりませんか。
共有者であることから直ちに鍵を交付する義務は生じません。誰が使用し、鍵をどう管理するかは共有物の管理に関する事項であり、持分の価格の過半数によって決すべき事項です(民法第252条第1項)。
無断で敷地に入り、写真を撮られました。何ができますか。
占有保持の訴えにより妨害の停止及び損害の賠償を、占有保全の訴えにより妨害の予防を請求することが考えられます(民法第198条、第199条)。撮影された写真の用途によっては、別途の請求を検討いたします。日時と態様を記録してください。
警察を呼んでもよいのでしょうか。
住居への無断の立入りについては、住居侵入等の罪が問題となり得ます(刑法第130条)。もっとも、共有者であることから正当な理由の有無が問題となり、評価は事案によります。まず記録を残し、対応については弁護士にご相談ください。
一切応じないでいると、不利になりますか。
直ちに不利になるものではありませんが、業者が共有物分割の訴えを提起する契機となることがあります。条件を定めて限定的に応ずる方が、交渉の主導権を保ちやすくなります。
おわりに
共有持分買取業者の立入りの求めは、応じるか拒むかの二択で考えると行き詰まります。条件を書面で定め、記録を残し、使用の対価の問題と併せて整理することが、結果として最も強い対応になります。業者からの書面と登記事項証明書をご用意のうえ、ご相談ください。必ず解決できますから、一緒に頑張りましょう。
共有持分買取業者の立入りの求めに関するご相談
弁護士法人M&A総合法律事務所 電話番号 03-6435-8418
受付時間 8:00-21:00(土日祝含む)
出典及び参照した法令
民法第198条、第199条、第249条第1項から第3項まで、第252条第1項及び第3項
民事保全法第23条第1項
刑法第130条
最高裁判所昭和41年5月19日大法廷判決(共有者の一人が共有物を単独で占有する場合の明渡請求)
具体的なご相談をお考えの皆様へ
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