共有関係を解消したときに生ずる税金 譲渡所得、不動産取得税及び登録免許税の取扱いと、課税されない場合

共有関係を解消することは決まった。しかし、税金がいくらかかるのかが分からないために、どの方法を選ぶべきか判断できない。共有不動産のご相談では、税の負担が方法の選択を左右することが少なくありません。

結論から申し上げます。共有物の分割という形を採るか、共有持分の売買という形を採るかによって、税の負担が変わります。共有物の分割については、譲渡所得、不動産取得税、登録免許税のいずれについても、負担を軽くする取扱いが用意されています。

もっとも、これらの取扱いには要件があり、分割前の持分の割合を超える部分については適用されないのが原則です。したがって、持分の割合と、分割によって取得する部分の価額とを対応させることが、税の面では最も重要になります。以下、税目ごとに整理します。なお、具体的な適用の可否は個別の事情によりますので、実行の前に税理士に確認いたします。

この記事の位置付け

税の負担は、共有関係をどのような方法で解消するかによって変わります。

譲渡所得 持分に応じた現物の分割であれば課税されません

所得税基本通達33-1の7は、個人が他の者と土地を共有している場合において、その共有に係る一の土地についてその持分に応ずる現物分割があったときには、その分割による土地の譲渡はなかったものとして取り扱う、と定めています。

すなわち、一筆の土地を分筆し、持分の割合に応じて各共有者の単独の所有とする場合には、譲渡所得の課税は生じません。共有物の分割は、実質的には従前から有していた持分の権利関係を整理するものであって、新たな資産の取得ではないという考え方によるものです。

これに対し、次の場合には課税関係が生じ得ます。第一に、分割によって取得する部分の価額が、従前の持分の割合に応じた価額を超える場合です。第二に、代償金の授受を伴う場合です。第三に、競売又は任意の売却によって不動産を換価し、代金を分ける場合です。この場合には、各共有者について、その持分に応じた譲渡があったことになります。

換価によって共有関係を解消する場合の譲渡所得

不動産を売却して代金を分ける方法による場合には、共有者それぞれについて譲渡所得を計算します。収入金額から取得費及び譲渡に要した費用を控除した額が、譲渡所得の金額となります。

取得費が分かる資料が残っていない場合には、収入金額の100分の5に相当する金額を取得費とすることができます(租税特別措置法第31条の4)。この方法によりますと、実際の取得費が大きい場合であっても課税の対象となる金額が大きくなり、税の負担が重くなります。被相続人が購入した際の売買契約書、当時の領収書を探してください。

他方、次の特例の適用がある場合には、負担が大きく軽減されます。第一に、居住の用に供している家屋等を譲渡した場合の3000万円の特別控除です(租税特別措置法第35条第1項)。第二に、相続又は遺贈により取得した被相続人の居住用の家屋等を一定の要件の下で譲渡した場合の特別控除です(同条第3項)。第三に、相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに相続財産を譲渡した場合における取得費の加算の特例です(租税特別措置法第39条)。

これらの特例には、いずれも期間の要件があります。共有関係の解消を先延ばしにしているうちに、適用の余地が失われることがあります。

不動産取得税 持分の割合を超える部分にのみ課されます

共有物の分割による不動産の取得については、当該分割による不動産の取得者の分割前の当該共有物に係る持分の割合を超える部分の取得を除き、不動産取得税が課されません(地方税法第73条の7第2号の3)。

したがって、持分の割合に応じた分割であれば、不動産取得税は生じません。これに対し、共有持分の売買という形を採りますと、取得した持分の全部について不動産取得税が課されます。同じ経済的な結果であっても、法律上の形をどう構成するかによって、税の負担が異なります。

なお、共有物の分割による取得に当たるかどうかは、個々の不動産ごとに判断されるものと理解しております。複数の不動産を共有している場合において、不動産ごとに単独の所有者を定める方法を採る場合には、この点の確認が必要です。

登録免許税 共有物の分割による移転の登記には低い税率があります

所有権の移転の登記に係る登録免許税の税率は、登録免許税法別表第一に定められています。土地の所有権の移転の登記のうち、共有物の分割によるものについては1000分の4、売買その他の原因によるものについては1000分の20とされています。

もっとも、この低い税率が適用される範囲は限られています。登録免許税法第17条第1項及び同法施行令第9条第1項により、分筆の登記がされた土地について、共有物の分割による所有権の移転の登記を同時に申請する場合であって、分割の前後を通じて所有する土地の価額に変動がない部分に限られると理解しております。分割前の持分の割合を超える部分については、この税率の適用がありません。

また、この規定は土地についてのものです。建物の所有権の移転の登記については、別に検討する必要があります。適用の可否は登記の申請の内容によりますので、司法書士に確認いたします。

その他に生ずる負担

第一に、印紙税です。不動産の譲渡に関する契約書には、記載された契約金額に応じた印紙税が課されます(印紙税法別表第一第1号)。共有物分割協議書についても、その内容によって課税文書に当たるかどうかが判断されます。

第二に、固定資産税です。固定資産税は、賦課期日である1月1日現在の所有者に課されます(地方税法第343条第1項、第359条)。年の途中で共有関係を解消しても、その年の固定資産税は従前の共有者に課されますので、当事者の間での精算の方法を定めておきます。

第三に、贈与税です。対価を支払わないで利益を受けた場合には、その利益を受けた者が贈与により取得したものとみなされます(相続税法第9条)。分割によって取得する部分の価額が、従前の持分の割合に応じた価額を上回るにもかかわらず、その差額に見合う代償金を支払わない場合には、この規定の適用が問題となります。

第四に、司法書士及び土地家屋調査士の報酬です。分筆を伴う現物の分割では、測量の費用が生じます。

方法の選び方によって負担が変わる例

共有者が2人で持分が各2分の1の土地について、一方が単独の所有者となる場合を考えます。

共有持分の売買という形を採りますと、取得する側には取得した持分について不動産取得税が課され、登録免許税も売買の税率によります。譲渡する側には譲渡所得の課税が生じます。

これに対し、複数の不動産を共有しており、それぞれについて単独の所有者を定める形の共有物の分割を採ることができるのであれば、持分の割合に応じている限り、譲渡所得の課税も不動産取得税も生じないことになります。

すなわち、共有関係にある不動産が複数あるかどうか、一筆の土地を分筆することができるかどうかによって、選択できる方法が変わります。手続に入る前に、対象となる不動産の全体を把握してください。

申告の期限と、必要となる資料

譲渡所得が生じた場合には、譲渡をした年の翌年に確定申告を行います。特別控除その他の特例の適用を受ける場合には、申告書に所定の書類を添付する必要があります。

用意する資料は、次のとおりです。第一に、売買契約書及び領収書(取得の時のもの及び譲渡の時のもの)。第二に、登記事項証明書。第三に、仲介手数料、登記費用、測量の費用、建物の解体の費用に係る領収書。第四に、住民票の除票、戸籍の附票(居住していたことを示す資料)。第五に、相続税の申告書の写し(取得費の加算の特例の適用を受ける場合)です。

これらの資料は、共有者それぞれが自ら保管しているとは限りません。共有関係を解消する協議の段階で、資料の所在を確認し、写しを相互に交付しておくことをお勧めいたします。解決した後に連絡が取りにくくなってから探し始めますと、特例の適用を受けられないことがあります。

放置した場合に失われるもの

第一に、居住用財産の譲渡に関する特別控除の適用です。居住しなくなってから相当の期間が経過しますと、要件を満たさなくなります。

第二に、相続財産を譲渡した場合の取得費の加算の特例です。相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに譲渡する必要があります(租税特別措置法第39条)。

第三に、被相続人の居住用の家屋等に係る特別控除です。この特例にも適用の期限と要件が定められています。

第四に、取得費を証する資料です。売買契約書、領収書は、時間の経過とともに散逸します。取得費が不明となれば、収入金額の100分の5によらざるを得ません(租税特別措置法第31条の4)。

他の共有者が税の話を避ける理由

第一に、負担がどちらに生ずるのかが分からないためです。共有物の分割では、取得する側に登録免許税と不動産取得税が、換価する場合には各共有者に譲渡所得の課税が生じます。誰にいくらの負担が生ずるのかを示さなければ、協議は進みません。

第二に、納税の資金を用意できないためです。不動産を取得しても現金は入りませんので、税額が大きい場合には資金の手当てが必要です。

第三に、申告の手続を負担に感じるためです。税理士への依頼を含めた段取りを併せて示すことで、協議が前に進むことがあります。

いま確認していただきたいこと

1 共有関係にある不動産を全て洗い出してください。複数あるかどうかで、選択できる方法が変わります。

2 登記事項証明書と公図を取得し、分筆が可能かどうかを確認してください。

3 被相続人が購入した際の売買契約書、領収書を探してください。取得費を証する資料になります。

4 相続税の申告をしている場合には、申告期限の日を確認してください。取得費の加算の特例の期限の起算点になります。

よくあるご質問

共有物分割をすると、必ず税金がかかりますか。

持分に応ずる現物の分割であれば、その分割による土地の譲渡はなかったものとして取り扱われ(所得税基本通達33-1の7)、不動産取得税も持分の割合を超える部分を除いて課されません(地方税法第73条の7第2号の3)。登録免許税は生じますが、要件を満たせば低い税率によります。

代償金を受け取りました。申告が必要ですか。

分割の方法、持分の割合との対応関係によって取扱いが異なります。実質的に持分の一部を譲渡したと評価される場合には、譲渡所得の申告が必要となります。個別に税理士に確認いたします。

売却して代金を分けました。誰が申告しますか。

共有者それぞれが、その持分に応じた譲渡所得について申告します。特別控除の適用も、共有者ごとに要件を判定します。

取得費が分かる資料がありません。

収入金額の100分の5に相当する金額を取得費とすることができます(租税特別措置法第31条の4)。ただし税の負担は重くなりますので、まず売買契約書、当時の通帳、住宅ローンの契約書等を探してください。

税金が高いので、共有のまま持ち続けた方がよいのではないですか。

共有のまま持ち続けますと、共有者が相続によって増え、建物の価値が下がり、各種の特例の期限も経過します。税の負担と、共有を続けることによる損失とを、数字で比較してご判断ください。

おわりに

共有関係の解消に伴う税は、方法の選び方によって大きく変わります。同じ結果を得るのであれば、負担の軽い方法を選ぶべきであり、そのためには対象となる不動産の全体と、持分の割合との対応を先に整理する必要があります。登記事項証明書と固定資産評価証明書をご用意のうえ、ご相談ください。必ず解決できますから、一緒に頑張りましょう。

共有関係の解消に伴う税金に関するご相談
弁護士法人M&A総合法律事務所 電話番号 03-6435-8418
受付時間 8:00-21:00(土日祝含む)

出典及び参照した法令

地方税法第73条の7第2号の3、第343条第1項、第359条
登録免許税法第17条第1項、別表第一
登録免許税法施行令第9条第1項
租税特別措置法第31条の4、第35条第1項及び第3項、第39条
相続税法第9条
印紙税法別表第一第1号
所得税基本通達33-1の7(共有地の分割)

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