共有不動産の紛争を弁護士に依頼する場合の費用 交渉、共有物分割の訴訟、鑑定に要する費用の内訳

この記事の位置付け
共有不動産の紛争を弁護士へ依頼する場合の費用に関するメインのページです。本ページは、交渉、共有物分割の訴訟及び鑑定のそれぞれに要する費用の内訳をご説明します。依頼の進め方は中核のページをご参照ください。
▶ 共有不動産の紛争を弁護士に依頼するとき 共有持分の買取り、分割及び明渡しの進め方
同じ主題を扱う関連ページ
共有不動産の問題を弁護士に依頼したい。しかし、いくらかかるのかが分からないために、相談そのものを先送りにしている。共有不動産のご相談では、この理由で数年が経過している例が少なくありません。
結論から申し上げます。共有不動産の紛争に要する費用は、弁護士費用、裁判所に納める費用、鑑定その他の実費、登記に伴う税金の四つに分かれます。このうち弁護士費用は、交渉の段階で終わるか、共有物分割の訴訟まで進むかによって水準が変わります。
費用の見通しを立てるうえで重要なのは、総額を先に知ることではなく、どの段階でどの費用が発生するかを把握し、進むか止まるかを段階ごとに判断できるようにすることです。以下、四つの区分に沿って整理します。
この記事の位置付け
費用の見通しは、手続がどこまで進むかによって変わります。手続そのものの内容は、次の各頁をご覧ください。
- 交渉から共有物分割の訴訟までに要する費用の全体像を確かめる場面……本記事
- 共有物分割の訴えに要する期間と費用の目安を確かめる場面……共有物分割の訴えに要する期間と費用の目安
- 不動産の鑑定を求める場合の手続と費用を確かめる場面……不動産の鑑定を求める場合の手続と費用
- 共有物分割の手続の全体像を確かめる場面……共有物分割請求の意義と利点、欠点及び流れ
- 不動産を売却した場合の税金を確かめる場面……不動産の売却と税金!
費用は四つに分かれます
第一が、弁護士費用です。着手金、月次報酬、連動報酬及び追加業務の報酬の有無を確認します。事務手数料や実費は別途区別します。
第二が、裁判所に納める費用です。訴えの提起の手数料(収入印紙)、郵便物の料金(予納郵券)、鑑定を実施する場合の鑑定料の予納金がこれに当たります。
第三が、資料の取得に要する実費です。登記事項証明書、固定資産評価証明書、戸籍謄本、住民票の除票の取得の費用、郵送の費用がこれに当たります。
第四が、解決の後に生ずる税金及び登記の費用です。所有権の移転の登記に係る登録免許税、不動産取得税、司法書士の報酬、譲渡所得に対する所得税及び住民税がこれに当たります。
弁護士費用だけを比べて判断してはなりません。競売による分割に至った場合と、話合いによって解決した場合とでは、第四の区分に生ずる金額が大きく異なります。
当事務所の弁護士費用
現行の弁護士費用のご案内には、「共有不動産の共有物分割業務」の区分があります。同区分では、着手金30万円(消費税等別途)、月次報酬は稼働時間に応じたタイムチャージ、連動報酬は経済的利益の12.0~36.0パーセント(消費税等別途)、最低連動報酬360万円(税別)と記載されています。
共有物分割請求の任意交渉については月次報酬が発生しない旨の記載があります。他方、共有物分割以外の業務及び法的手続では月次報酬が発生する取扱いです。証人尋問、緊急対応、休日作業等の追加条件、実費、事務手数料及び事前預り金も確認します。
遺産分割・遺留分請求の区分にある着手金なしプラン等が、共有物分割にも当然に適用されるわけではありません。遺産共有の解消なのか、通常の共有物分割なのか、併せてどの請求を依頼するのかを確認し、見積書及び委任契約書で業務範囲と計算方法を明らかにします。
費用を比較する際は、金額だけでなく、どの業務が含まれるかを確認してください。任意交渉、共有物分割訴訟、使用対価の請求、賃料の分配、判決後の手続は、依頼範囲が異なります。
受任前に確認する事項
当事務所の費用は弁護士費用のご案内に掲載しています。共有物分割業務に関する記載と、個別案件の見積書・契約書を対照します。
| 項目 | 確認内容 |
|---|---|
| 着手金 | 税込額、支払時期、追加依頼時の取扱い |
| 月次報酬 | 任意交渉の例外が適用される範囲、法的手続の稼働時間 |
| 連動報酬 | 経済的利益の定義、報酬率、最低額、税の取扱い |
| 追加報酬 | 証人尋問、緊急対応、休日作業等の条件 |
| 実費 | 裁判所への納付、鑑定、測量、登記、郵送、事務手数料 |
| 手続の範囲 | 控訴、競売、登記、明渡し、金銭回収を含むか |
経済的利益の意味を揃えます
金銭を受け取る場合、不動産を取得する場合、請求額を減額する場合では、報酬計算の基礎の確認が必要です。不動産全体の時価を当然に基礎とするのか、ご自身が取得する持分等を基礎とするのかを、契約で確認します。
弁護士費用と訴訟費用を分けます
裁判所が負担を定める訴訟費用と、依頼した弁護士への報酬は同じではありません。相手方に勝てば弁護士費用を当然に全額負担させられると見込んで資金計画を作らないでください。
費用を含めた方針の比較
現金化の条件だけでなく、必要な資料、期間、相手方の資力及び費用を確認します。総額を確定できない費目は、その理由と追加見積りの時点を明らかにします。
金額比較と報酬率による違いを確認する / 依頼範囲と費用について相談する
裁判所に納める費用
共有物の分割を裁判所に請求する場合には、提出方法に応じて手数料を納付します。手数料の額は、訴訟の目的の価額に応じて定まります(民事訴訟費用等に関する法律第3条第1項、別表第一)。
共有物分割の訴えの訴訟の目的の価額については、原告の共有持分の価格を基礎として算定する運用が採られていると理解しておりますが、算定の方法は事案及び裁判所により異なり得ますので、提訴の前に確認いたします。
このほか、当事者への書類の送達等に用いる郵便物の料金を予納します。額は裁判所及び当事者の数により異なります。
鑑定が実施される場合には、鑑定料を予納します。鑑定料は、対象となる不動産の種類、規模、評価の難易により大きく異なりますので、鑑定の申出をする前に、裁判所を通じて概算を確認します。鑑定を実施した後に和解をしても、既に支出した鑑定料は戻りません。鑑定を求めるか否かは、争点が価格に集中しているかどうかによって判断します。
訴訟費用は、相手方に負担させられるのか
訴訟費用は、原則として敗訴の当事者が負担します(民事訴訟法第61条)。もっとも、共有物分割の訴訟は、当事者の一方が勝ち他方が負けるという構造の訴訟ではなく、裁判所が分割の方法を定める性質の手続です。そのため、訴訟費用を各当事者の持分の割合に応じて負担させる例が見られます。
また、ここでいう訴訟費用には、弁護士費用は原則として含まれません。不法行為に基づく損害賠償の請求において弁護士費用の一部が損害として認められる例はありますが、共有物分割の訴訟において、ご自身が支払った弁護士費用を相手方に請求できるわけではありません。
和解によって終了する場合において、和解の費用又は訴訟費用の負担について特別の定めをしなかったときは、その費用は各自の負担となります(民事訴訟法第68条)。
解決の後に生ずる税金及び登記の費用
共有関係が解消された後には、次の費用が生じます。
第一に、所有権の移転の登記に係る登録免許税です。税率は登録免許税法別表第一に定められており、土地の所有権の移転の登記のうち共有物の分割によるものについては、売買その他の原因によるものよりも低い税率が定められています。もっとも、この低い税率が適用されるのは、分筆の登記がされた土地について共有物の分割による所有権の移転の登記を同時に申請する場合であって、分割の前後を通じて所有する土地の価額に変動がない部分に限られると理解しております(登録免許税法第17条第1項、同法施行令第9条第1項)。分割前の持分の割合を超える部分については、適用がありません。
第二に、不動産取得税です。共有物の分割による不動産の取得については、分割前の当該共有物に係る持分の割合を超える部分の取得を除き、不動産取得税が課されません(地方税法第73条の7第2号の3)。共有物分割という形を採るか、持分の売買という形を採るかによって、税の負担が変わります。
第三に、譲渡所得に対する所得税及び住民税です。持分に応じた現物の分割であれば、その分割による土地の譲渡はなかったものとして取り扱われます(所得税基本通達33-1の7)。他方、共有持分を売却した場合、あるいは代償金を受領した場合には、課税関係を個別に確認する必要があります。
第四に、司法書士に登記を依頼する場合の報酬です。
費用をかけないまま放置した場合に失われるもの
第一に、不動産の価値です。修繕がされないまま年月が経過した建物は、価値が下がります。共有者の全員が持分に応じてその損失を負います。
第二に、使用の対価の請求権です。共有者は、別段の合意がある場合を除き、自己の持分を超える使用の対価を他の共有者に償還する義務を負います(民法第249条第2項)。過去の分について請求できる範囲は、時間の経過とともに限られてきます。
第三に、遺産共有の場合の具体的相続分による分割の機会です。相続開始の時から10年を経過した後の遺産分割は、原則として具体的相続分によらないこととされています(民法第904条の3)。ただし、期間内の遺産分割請求等の例外、経過措置及び当事者間の合意の可否を確認する必要があります。
第四に、共有者の数が増えないうちに解決する機会です。共有者が死亡すればその持分は相続され、共有者の数は増えます。当事者が増えるほど、調査の費用も、手続に要する期間も増加します。
相手方の共有者が費用の話を避ける理由
費用の話を持ち出すと、相手方の態度が硬くなることがあります。理由は次のとおりです。
第一に、費用を負担させられることを警戒しているためです。共有物分割の訴訟に至れば、訴訟費用のほか、それぞれが弁護士費用を負担します。相手方にとっても、話合いで終える方が経済的です。この点は、交渉を前に進めるための共通の利害になります。
第二に、資力がないためです。代償金を支払って取得することも、弁護士に依頼することもできない状態にある共有者がいます。この場合には、金銭の支出を伴わない解決、すなわち不動産全体を売却して代金を分ける方法を先に提示する方が、話が進みます。
第三に、費用の話を切り出すこと自体が、訴訟に進む意思の表明と受け取られるためです。手続の選択肢と、それぞれに要する費用を並べて示せば、威嚇ではなく比較として受け止められます。
費用を抑えるために、ご自身で準備できること
弁護士費用は業務量に連動しますので、資料が整っているほど、要する時間が短くなります。
登記事項証明書、公図、固定資産評価証明書、固定資産税の納税通知書、相続が関係する場合の戸籍謄本一式、共有者との過去のやり取りの記録を、あらかじめ集めていただけますと、初回の相談の段階で採り得る手続の見通しを申し上げることができます。
また、ご自身の目的を先に定めていただくことも、費用の抑制につながります。不動産を残したいのか、現金に換えたいのかによって、進める手続が変わります。方針が定まらないまま複数の手続を並行させますと、業務量が増えます。
いま確認していただきたいこと
1 登記事項証明書を取得し、共有者の氏名と持分の割合を確認してください。
2 固定資産評価証明書を取得してください。裁判所に納める手数料の算定の基礎になります。
3 複数の宅地建物取引業者に査定を依頼し、不動産の価格の幅を把握してください。報酬金の算定の基礎となる経済的利益の見当がつきます。
4 相続が関係する場合には、相続の開始の日を確認してください。10年の経過の有無によって、主張し得る内容が変わります。
よくあるご質問
相談だけでも費用はかかりますか。
初回の相談において、必要資料を突合し、作業の範囲を確定したうえで弁護士費用を提示いたします。相談の費用の取扱いは、弁護士費用の頁の記載によります。
共有物分割にも着手金なしプランが適用されますか。
共有物分割業務は公開費用表の別区分です。遺産分割等のプランが当然に適用されるわけではありません。依頼する請求と業務範囲を確認し、適用区分、追加費用及び精算条件を見積書・契約書で明らかにします。
共有物分割の訴訟まで進んだ場合、総額はどのくらいになりますか。
弁護士費用、収入印紙、予納郵券、鑑定料、登記の費用の合計となります。このうち鑑定料と収入印紙は不動産の価格により変動しますので、固定資産評価証明書と査定書を拝見したうえで概算を申し上げます。
相手方に弁護士費用を負担させることはできますか。
共有物分割の訴訟において、ご自身が支払った弁護士費用を相手方に請求することは、原則としてできません。訴訟費用(収入印紙、予納郵券等)の負担は裁判所が定めますが、これに弁護士費用は含まれないのが原則です。
費用倒れになることはありませんか。
不動産の価格、持分の割合、想定される解決の内容から、費用と得られる結果を比較してご説明いたします。比較の結果、手続を進めない方がよいと考えられる場合には、その旨を率直に申し上げます。
おわりに
費用の見通しが立たないことを理由に共有関係を放置しますと、共有者の数が増え、建物の価値が下がり、主張し得る内容も限られてきます。費用の見通しは、資料と依頼範囲を確認して御説明します。追加調査が必要な費目は、その理由と確認時期をお伝えします。まず登記事項証明書と固定資産評価証明書をご用意のうえ、ご相談ください。御希望と資料を伺い、費用を含めて選択肢を検討します。
共有不動産の紛争に要する費用に関するご相談
弁護士法人M&A総合法律事務所 電話番号 03-6435-8418
受付時間 8:00-21:00(土日祝含む)
出典及び参照した法令
民法第249条第2項、第258条、第904条の3
民事訴訟法第61条、第68条
民事訴訟費用等に関する法律第3条第1項、別表第一
地方税法第73条の7第2号の3
登録免許税法第17条第1項、別表第一
所得税基本通達33-1の7(共有地の分割)
弁護士法人M&A総合法律事務所の弁護士費用の頁(共有不動産の共有物分割業務の区分)
具体的なご相談をお考えの皆様へ
本ページの主題に関し、当事務所の取扱内容、対応の進め方及び費用の考え方は、次のご案内のページに整理しています。あわせてご覧ください。



