共有物分割の判決が確定した後にすること 登記の申請、代償金の決済及び競売の申立て

共有物分割の判決が言い渡された。ところが、判決を受け取っただけでは、登記の名義は変わらず、代金も入ってきません。判決が確定した後に何をすべきかが分からないまま、数か月が経過している。共有不動産のご相談では、この段階で改めてご依頼をいただくことがあります。

結論から申し上げます。共有物分割の判決は、それ自体で登記の名義を変えるものではありません。命じられた分割の方法に応じて、登記の申請、代償金の授受、あるいは競売の申立てを、ご自身の側から行う必要があります。

また、判決の内容によっては、相手方が任意に履行しないことがあります。その場合には強制執行によることになりますが、そのためには、判決が確定していること、執行文の付与を受けていることといった要件を満たす必要があります。判決の言渡しは終点ではなく、実現のための出発点です。

この記事の位置付け

共有物分割の手続は、いまどの段階にあるかによって、行うべきことが変わります。

まず、判決が確定したことを確かめます

控訴は、判決書の送達を受けた日から2週間の不変期間内に提起しなければなりません(民事訴訟法第285条)。この期間内に控訴の提起がなければ、判決は確定します。

登記の申請や強制執行の申立てには、判決が確定していることを証する書面が必要となります。判決をした裁判所の裁判所書記官に対し、判決確定証明書の交付を申請します。あわせて、送達証明書の交付を受けます。

相手方が控訴したかどうかは、ご自身の側では自動的には分かりません。控訴期間の満了を待って、裁判所書記官に確認します。相手方が控訴した場合には、手続は控訴審に移り、確定は先になります。

賠償による分割が命じられた場合

共有者の一人に共有物を取得させ、他の共有者にその持分の価格を賠償させる方法が命じられた場合には、代償金の授受と所有権の移転の登記を行います。

登記の申請

権利に関する登記の申請は、登記権利者及び登記義務者が共同してしなければなりません(不動産登記法第60条)。もっとも、登記手続をすべきことを命ずる確定判決による登記は、共同して申請すべき者の一方が単独で申請することができます(不動産登記法第63条第1項)。

したがって、判決の主文に登記手続を命ずる部分が含まれていれば、相手方の協力が得られなくても、単独で登記の申請をすることができます。判決の主文にこの部分が含まれているかどうかを、必ず確認してください。裁判所は、共有物の分割の裁判において、当事者に対して金銭の支払、物の引渡し、登記義務の履行その他の給付を命ずることができるとされています(民法第258条第4項)。

代償金の支払

代償金の支払と登記手続とが引換給付の関係とされている場合には、支払を証する書面が登記の申請に必要となります。振込みによる場合には、振込みを行った金融機関の証明を保存してください。

相手方が代償金を支払わない場合には、判決を債務名義として強制執行を申し立てます。金銭債権に対する差押え、不動産に対する強制競売、動産に対する差押えのいずれによるかは、相手方の財産の状況によって選択します。

引換給付とされている場合の実務

代償金の支払と登記手続とが引換給付の関係とされている場合には、双方が同時に履行される必要があります。実務上は、司法書士の立会いのもとで、代償金の支払と登記の申請に必要な書類の授受とを同じ場で行います。金融機関からの融資を受けて代償金を支払う場合には、融資の実行の日と登記の申請の日を合わせる調整が必要になります。

登記に伴う税金

所有権の移転の登記に係る登録免許税が生じます。税率は登録免許税法別表第一に定められており、土地の所有権の移転の登記のうち共有物の分割によるものについては、売買その他の原因によるものよりも低い税率が定められています。もっとも、この低い税率が適用されるのは、分筆の登記がされた土地について共有物の分割による所有権の移転の登記を同時に申請する場合であって、分割の前後を通じて所有する土地の価額に変動がない部分に限られると理解しております(登録免許税法第17条第1項、同法施行令第9条第1項)。分割前の持分の割合を超える部分については、適用がありません。

不動産取得税については、共有物の分割による不動産の取得のうち、分割前の当該共有物に係る持分の割合を超える部分の取得を除いて、課されません(地方税法第73条の7第2号の3)。

現物による分割が命じられた場合

土地を分けて各共有者の単独の所有とする方法が命じられた場合には、分筆の登記と、所有権の移転又は更正の登記を行います。

分筆の登記には、確定した境界に基づく測量が必要です。判決の別紙に図面が添付されている場合には、これに従います。土地家屋調査士に依頼して、地積測量図を作成します。

隣接地との境界が確定していない場合には、この段階で新たな作業が生じます。訴訟の途中で境界の問題が顕在化していなかった事案では、判決の後になって測量に時間を要することがあります。

競売が命じられた場合

共有物の現物を分割することができないとき、又は分割によってその価格を著しく減少させるおそれがあるときは、裁判所は、その競売を命ずることができます(民法第258条第3項)。

この競売は、担保権の実行としての競売ではなく、換価のための競売です。民法、商法その他の法律の規定による換価のための競売については、担保権の実行としての競売の例によるとされています(民事執行法第195条)。

競売は、判決が確定すれば自動的に始まるものではありません。共有者のいずれかが、執行裁判所に対して競売の申立てをする必要があります。申立てには、判決の正本、確定証明書、登記事項証明書、固定資産評価証明書等を添付し、手続の費用を予納します。

売却がされた場合、代金は、まず手続の費用に充てられ、抵当権等の担保権があればその被担保債権に配当され、その残余が共有者に持分の割合に応じて交付されます。

判決の後に生ずる税金の申告

分割の方法によって、課税関係が異なります。

持分に応じた現物の分割であれば、その分割による土地の譲渡はなかったものとして取り扱われます(所得税基本通達33-1の7)。この場合には、譲渡所得の申告を要しません。

これに対し、競売により売却された場合には、共有者それぞれについて、その持分に応じた譲渡所得が生じます。売却の代金から取得費及び譲渡の費用を控除して所得の金額を算定し、譲渡の年の翌年に確定申告を行います。取得費が分かる資料が残っていない場合には、収入金額の5パーセントを取得費とする取扱いによらざるを得ず、税の負担が重くなります。被相続人が購入した際の売買契約書を探してください。

代償金を受領した場合の課税関係は、分割の方法及び持分の割合との関係によって異なりますので、税理士に確認いたします。

相手方が任意に履行しない場合

判決に基づいて強制執行をするには、執行文の付与を受けた判決の正本が必要です(民事執行法第26条)。執行文は、判決をした裁判所の裁判所書記官に申請します。

明渡しを命ずる部分がある場合には、不動産の引渡し等の強制執行として、執行官に申立てをします。代償金の支払を命ずる部分がある場合には、相手方の預金債権、給与債権、不動産に対する執行を検討します。

相手方の財産を把握していなければ、執行の対象を選ぶことができません。財産開示手続及び第三者からの情報取得手続を用いることができますので、訴訟の段階から、相手方の資産に関する情報を集めておきます。

放置した場合に失われるもの

第一に、代償金の回収の可能性です。時間が経過するほど、相手方の資力の状況は変わります。判決が確定した後、速やかに履行を求めます。

第二に、不動産の価値です。競売が命じられた事案では、申立てをしないまま放置しますと、建物の劣化が進み、売却の代金が下がります。

第三に、固定資産税の負担です。登記の名義が変わらない限り、共有者としての連帯納付の義務が続きます(地方税法第10条の2第1項)。固定資産税は賦課期日である1月1日現在の所有者に課されますので(地方税法第343条第1項、第359条)、年をまたぐと1年分の負担が生じます。

第四に、判決の効力そのものではありませんが、相手方が不動産を第三者に処分してしまう危険です。判決の確定の後、直ちに登記の申請をいたします。

相手方が履行を渋る理由

第一に、資金を用意できていない場合です。代償金の支払を命ずる判決を受けても、金融機関の融資が得られなければ支払うことができません。この場合には、支払の期限を延ばす代わりに担保を設定する、あるいは競売による換価へ切り替えるといった協議が現実的です。

第二に、明渡しの準備ができていない場合です。転居先が決まっていない、家財の処分ができていないといった事情があります。期限を区切って猶予することで、強制執行の費用を節約できることがあります。

第三に、判決の内容に納得していない場合です。控訴期間が経過していれば争うことはできませんが、感情的な抵抗が残ります。この場合には、履行の方法について協議し、覚書を交わすことが、強制執行よりも早く目的を達することがあります。

いま確認していただきたいこと

1 判決書を読み返し、主文に登記手続を命ずる部分、金銭の支払を命ずる部分、物の引渡しを命ずる部分が含まれているかどうかを確認してください。

2 裁判所書記官に対し、判決確定証明書及び送達証明書の交付を申請してください。

3 登記の申請に必要な書類を確認してください。分割の方法によって、必要となる書類が異なります。

4 競売が命じられた場合には、申立てに要する費用と、想定される配当の額を試算してください。申立てをするか、相手方と改めて任意の売却を協議するかの判断の材料になります。

よくあるご質問

判決が出れば、自動的に登記の名義が変わりますか。

変わりません。判決の主文に登記手続を命ずる部分が含まれている場合には、相手方の協力がなくても単独で登記の申請をすることができますが(不動産登記法第63条第1項)、申請そのものはご自身の側で行う必要があります。

競売を命ずる判決が出ました。すぐに競売が始まりますか。

始まりません。共有者のいずれかが執行裁判所に競売の申立てをする必要があります。申立てをしないまま放置されている事案もあります。

代償金を支払ってもらえません。どうすればよいですか。

判決を債務名義として強制執行を申し立てます。執行文の付与を受けたうえで(民事執行法第26条)、相手方の財産に対して執行します。財産が分からない場合には、財産開示手続及び第三者からの情報取得手続を検討いたします。

判決の後に、相手方と話し合って別の方法にすることはできますか。

できます。判決は強制的に実現するための根拠を与えるものであり、当事者が合意して別の方法を採ることを妨げるものではありません。ただし、合意の内容は書面に残し、判決に基づく執行をしない旨を明記してください。

判決までに要した弁護士費用を、相手方に請求できますか。

共有物分割の訴訟において、ご自身が支払った弁護士費用を相手方に請求することは、原則としてできません。訴訟費用の負担は判決の主文で定められますが、これに弁護士費用は含まれないのが原則です。

おわりに

共有物分割の判決は、共有関係を終わらせるための道具であって、それ自体が結果ではありません。確定の確認、証明書の取得、登記の申請、競売の申立て、強制執行という一連の手続を、期限を意識して進める必要があります。判決を受け取ったまま止まっておられる方は、判決書と登記事項証明書をご用意のうえ、ご相談ください。必ず解決できますから、一緒に頑張りましょう。

共有物分割の判決の後の手続に関するご相談
弁護士法人M&A総合法律事務所 電話番号 03-6435-8418
受付時間 8:00-21:00(土日祝含む)

出典及び参照した法令

民法第258条第2項から第4項まで
民事訴訟法第285条
民事執行法第26条、第195条
不動産登記法第60条、第63条第1項
地方税法第10条の2第1項、第73条の7第2号の3、第343条第1項、第359条
登録免許税法第17条第1項、別表第一
所得税基本通達33-1の7(共有地の分割)
租税特別措置法第31条の4(長期譲渡所得の概算取得費控除)

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