共有する建物の賃貸借を更新し、又は解除するとき 共有者の全員の同意が必要になる場合

共有する建物を第三者に貸している。賃貸借の期間が満了するので更新をしないと伝えたいが、共有者の一人が反対している。あるいは、賃料の滞納が続いている賃借人との契約を解除したいが、他の共有者と連絡が取れない。共有する賃貸不動産のご相談では、この場面がしばしば生じます。

結論から申し上げます。賃貸借の解除は、共有者の持分の価格の過半数によって決することができ、共有者の全員の同意までは必要ありません。これに対し、借地借家法の適用がある建物の賃貸借を新たに設定することは、共有者の全員の同意を要すると解されています。

すなわち、契約を終わらせる方向の行為と、新たに設定する方向の行為とで、必要となる同意の範囲が異なります。この違いを取り違えますと、必要のない同意を求めて手続が止まり、あるいは必要な同意を欠いたまま契約を締結してしまいます。

この記事の位置付け

共有する賃貸不動産では、行おうとする行為によって必要となる同意の範囲が変わります。

賃貸借の解除は、持分の価格の過半数で決することができます

共有物の管理に関する事項は、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決します(民法第252条第1項)。

最高裁判所昭和39年2月25日判決(民集18巻2号329頁)は、共有者が共有物を目的とする貸借契約を解除することは、共有物の管理に関する事項に当たり、当事者の一方が数人ある場合の解除は全員からしなければならないとする民法第544条第1項の規定の適用が排除されるとしています。

したがって、賃料の滞納その他の債務不履行を理由とする解除は、持分の価格の過半数を有する共有者によって行うことができます。共有者の一人が反対していても、また所在が分からなくても、過半数に達していれば解除の意思表示をすることができます。

もっとも、解除の意思表示は賃借人に対して行いますので、後日の紛争に備え、誰が誰の意思に基づいて解除をしたのかを明らかにしておく必要があります。配達証明付きの内容証明郵便により、持分の価格の過半数を有する共有者の連名で通知することが実務上の扱いです。

期間の満了による終了を求める場合

建物の賃貸借について期間の定めがある場合、当事者が期間の満了の1年前から6か月前までの間に相手方に対して更新をしない旨の通知又は条件を変更しなければ更新をしない旨の通知をしなかったときは、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなされます(借地借家法第26条第1項)。

この更新をしない旨の通知をすることも、共有物の管理に関する事項として、持分の価格の過半数によって決することができると解されます。

ただし、通知をしたからといって当然に終了するわけではありません。建物の賃貸人による更新をしない旨の通知は、建物の賃貸人及び賃借人が建物の使用を必要とする事情、賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況及び現況並びに立退料の提供の申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければすることができません(借地借家法第28条)。

共有者の間で更新をしない方針が決まったとしても、正当の事由が認められなければ、賃貸借は終了しません。正当の事由の有無は、共有者の側の事情ではなく、賃貸人と賃借人の双方の事情を比較して判断されます。

新たに賃貸借を設定する場合は、扱いが異なります

共有者は、持分の価格の過半数により、共有物に賃借権その他の使用及び収益を目的とする権利を設定することができます。ただし、その期間には上限があり、樹木の栽植又は伐採を目的とする山林の賃借権等は10年、それ以外の土地の賃借権等は5年、建物の賃借権等は3年、動産の賃借権等は6か月を超えることができません(民法第252条第4項各号)。

ところが、借地借家法の適用がある建物の賃貸借は、期間の定めがあっても、更新をしない旨の通知がなければ更新されたものとみなされ(借地借家法第26条第1項)、その通知にも正当の事由が必要とされます(同法第28条)。すなわち、契約上の期間が3年以内であっても、実際には3年を超えて存続し得ます。

そのため、借地借家法の適用がある建物の賃貸借を設定することは、民法第252条第4項の枠内に収まらず、共有物の変更に当たるものとして共有者の全員の同意を要すると解されています。

これに対し、期間の定めがある建物の賃貸借であって契約の更新がないこととする旨を定めたもの、いわゆる定期建物賃貸借(借地借家法第38条)であって、期間が3年を超えないものであれば、管理に関する事項として持分の価格の過半数によって決することができます。共有する建物を新たに貸す場合には、この形を選ぶことが実務上の解決になります。

賃料の滞納を理由に解除する場合の手順

賃料の滞納を理由とする解除は、次の順序で進めます。

第一に、滞納の期間と金額を確定させます。入金の記録を月ごとに整理し、いつから、いくらの不払があるのかを一覧にします。

第二に、相当の期間を定めて履行を催告します。当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は契約の解除をすることができます(民法第541条本文)。ただし、その期間を経過した時における債務の不履行がその契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるときは、解除をすることができません(同条ただし書)。

第三に、催告の期間が経過してから、解除の意思表示をします。建物の賃貸借の解除については、賃貸人と賃借人との間の信頼関係が破壊されたと認められる程度に至っていることを要すると解されており、1か月分の滞納だけでは解除が認められないのが通例です。滞納の期間、過去の支払の状況、催告に対する対応を踏まえて判断します。

第四に、明渡しに応じない場合には、建物の明渡しを求める訴えを提起します。判決を得た後、任意に明け渡さない場合には、不動産の引渡し等の強制執行を申し立てます。

第五に、敷金の精算を行います。賃貸人は、賃貸借が終了し、かつ、賃貸物の返還を受けたときは、賃借人に対し、その受け取った敷金の額から賃貸借に基づいて生じた金銭の給付を目的とする債務の額を控除した残額を返還しなければなりません(民法第622条の2第1項第1号)。滞納賃料は、この控除の対象となります。

持分の価格の過半数に達しない場合

共有者が2人で持分が各2分の1である場合など、単独では過半数に達しない場合には、他の共有者の同意を得るほかありません。相手方が賛否を明らかにしないときは、相当の期間を定めて催告したうえで裁判所の裁判を求める方法があります(民法第252条第2項第2号)。手続の詳細は、共有不動産の管理に関する別の頁に整理しております。

賃料の受領と分配

賃料は、共有物から生ずる果実として、各共有者がその持分の割合に応じて取得します。管理をする共有者が賃料の全額を受領している場合には、他の共有者は持分の割合に応じた分配を求めることができます。

賃料の増額又は減額を求めることも、共有物の管理に関する事項として、持分の価格の過半数によって決することができると解されます。建物の借賃が、土地若しくは建物に対する租税その他の負担の増減により、土地若しくは建物の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって建物の借賃の額の増減を請求することができます(借地借家法第32条第1項)。

放置した場合に失われるもの

第一に、更新をしない旨の通知の機会です。期間の満了の1年前から6か月前までの間に通知をしなければ、従前の契約と同一の条件で更新されたものとみなされます(借地借家法第26条第1項)。この期間を過ぎますと、次の期間の満了まで待つことになります。

第二に、解除の機会です。賃料の滞納を理由とする解除は、信頼関係が破壊されたと認められる程度に至っていることを要すると解されています。滞納が続いている間に催告と解除の手続を進めなければ、賃借人が一部を支払うことによって、解除が認められにくくなります。

第三に、賃料の分配を求める権利です。分配を求めないまま長期間が経過しますと、請求できる範囲が限られます。

第四に、賃借人との交渉の余地です。建物の老朽化が進み、明渡しを求める必要が高まってから交渉を始めますと、立退料の額が大きくなります。

反対する共有者の事情

更新をしないことや解除に反対する共有者には、次のような事情があります。

第一に、賃料の収入が途絶えることを避けたい場合です。空室となれば収入は止まり、固定資産税の負担だけが残ります。この場合には、次の賃借人の見込み、あるいは売却の見込みを併せて示す必要があります。

第二に、賃借人と個人的な関係がある場合です。先代からの付き合い、親族が賃借人であるといった事情があります。

第三に、明渡しに要する費用の負担を避けたい場合です。立退料、原状回復の費用、訴訟の費用は、いずれも持分に応じて負担することになります。

いずれの場合も、収支の見通しを数字で示すことが、最も有効な説得の材料になります。賛否だけを問う照会では、回答が得られません。

いま確認していただきたいこと

1 賃貸借契約書を確認し、契約の類型、期間の始期と終期、更新に関する定めを確認してください。定期建物賃貸借であるか否かで、扱いが大きく異なります。

2 登記事項証明書を取得し、共有者の氏名と持分の割合を確認してください。持分の価格の過半数を計算する前提になります。

3 賃料の入金の記録を確認し、滞納の有無と期間を整理してください。

4 期間の満了の日を確認してください。更新をしない旨の通知は、期間の満了の1年前から6か月前までの間にしなければなりません。

よくあるご質問

共有者の一人が反対していますが、解除できますか。

持分の価格の過半数に達していれば、解除をすることができます。共有物を目的とする貸借契約の解除は共有物の管理に関する事項に当たり、解除は全員からしなければならないとする民法第544条第1項の適用が排除されると解されています(最高裁判所昭和39年2月25日判決)。

共有者が2人で持分が各2分の1です。どうすればよいですか。

いずれも過半数に達しませんので、相手方の同意が必要になります。相手方が賛否を明らかにしない場合には、相当の期間を定めて催告したうえで、民法第252条第2項第2号の裁判を求めることができます。

新たに賃借人を入れたいのですが、全員の同意が必要ですか。

借地借家法の適用がある通常の建物の賃貸借であれば、共有者の全員の同意を要すると解されています。期間を3年以内とする定期建物賃貸借(借地借家法第38条)であれば、持分の価格の過半数によって決することができます。

更新をしない旨を通知すれば、必ず明け渡してもらえますか。

そうではありません。通知には正当の事由が必要であり(借地借家法第28条)、賃貸人と賃借人の双方の事情を比較して判断されます。立退料の提供の申出も考慮の要素となります。

共有者の一人が賃料を全額受け取っています。取り戻せますか。

持分の割合に応じた分配を求めることができます。管理をする共有者に対しては、収支の報告を求めることも検討いたします。入金の記録と賃貸借契約書をご用意ください。

おわりに

共有する賃貸不動産では、契約を終わらせる行為と新たに設定する行為とで、必要となる同意の範囲が異なります。これを整理したうえで、期間の満了の日から逆算して手続を進めれば、共有者の全員が揃わなくとも前に進めることができます。賃貸借契約書と登記事項証明書をご用意のうえ、ご相談ください。必ず解決できますから、一緒に頑張りましょう。

共有する賃貸不動産の賃貸借の更新及び解除に関するご相談
弁護士法人M&A総合法律事務所 電話番号 03-6435-8418
受付時間 8:00-21:00(土日祝含む)

出典及び参照した法令

民法第251条第1項、第252条第1項から第5項まで、第541条、第544条第1項、第622条の2第1項第1号
借地借家法第26条第1項、第27条第1項、第28条、第32条第1項、第38条
最高裁判所昭和39年2月25日第三小法廷判決(民集18巻2号329頁)

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