離婚後も夫婦の共有名義のまま残った家をどうするか 財産分与、持分の買取り及び住宅ローンの整理
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▶ 共有不動産の紛争を弁護士に依頼するとき 共有持分の買取り、分割及び明渡しの進め方
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離婚は成立した。しかし、夫婦で購入した自宅は共有名義のまま残っている。住宅ローンの返済も続いている。相手方は家に住み続けており、話合いにも応じない。離婚から数年が経過している。共有不動産のご相談には、この状態のまま時間だけが経過している事案が数多くあります。
結論から申し上げます。離婚から2年が経過しますと、家庭裁判所に対して財産分与に関する処分を請求することができなくなります。この期間を過ぎた場合には、共有物分割の手続によることになりますが、財産分与であれば考慮されたはずの寄与の程度、扶養の必要といった事情が、そのままでは考慮されません。
また、名義を変えても住宅ローンの債務は当然には移りません。家を出た側が、住んでいない家の債務を負い続けるという事態が、実際に数多く生じています。不動産の名義、住宅ローンの債務者、抵当権の三つを、同時に整理する必要があります。
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共有名義の自宅の整理は、共有となった原因によって手続が変わります。
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離婚から2年という期間の制限があります
協議上の離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができます(民法第768条第1項)。協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができますが、離婚の時から2年を経過したときは、この請求をすることができません(同条第2項ただし書)。裁判上の離婚についても、この規定が準用されます(民法第771条)。
2年を経過した後は、共有物の分割の手続によって共有関係を解消することになります。各共有者は、いつでも共有物の分割を請求することができ(民法第256条第1項本文)、協議が調わないときは、その分割を裁判所に請求することができます(民法第258条第1項)。
もっとも、共有物分割の手続では、登記された持分の割合が出発点となります。財産分与であれば、婚姻中に形成された財産に対する寄与の程度、離婚後の扶養の必要、婚姻費用の清算といった事情を考慮して分与の割合を定めることができますが、共有物分割ではこれらが当然には考慮されません。持分の割合が実質的な寄与と異なる場合には、この差が結果に表れます。
離婚が成立する前から共有物分割を求めることもできます
離婚の成否をめぐって争いが長期化している場合、その間も住宅ローンの返済と固定資産税の負担は続きます。この場合には、離婚の成立を待たずに共有物の分割を請求することも選択肢となります。
共有物分割の請求は、共有者であることに基づく権利ですので、夫婦であるかどうかを問いません。裁判例には、住宅ローンが残っている段階での財産分与の請求について慎重な判断を示したもの、他方で、妻子が居住している自宅について夫が共有物の分割を求めた事案において権利の濫用に当たるとしたものがあると理解しております。いずれの手続によるかは、居住の状況、住宅ローンの残債務、離婚の協議の進み具合によって判断いたします。
不動産の名義、住宅ローンの債務、抵当権を同時に整理します
不動産の名義
財産分与によって一方が他方の持分を取得する場合には、財産分与を原因とする持分の移転の登記を行います。登記の申請は、登記権利者及び登記義務者が共同してしなければなりません(不動産登記法第60条)。相手方が協力しない場合には、登記の手続を求める調停又は審判、訴訟を検討いたします。
住宅ローンの債務
不動産の名義を移しても、住宅ローンの債務者は当然には変わりません。連帯債務者となっている場合、連帯保証人となっている場合のいずれについても、金融機関の承諾を得た債務の引受け、又は借換えによらなければ、債務から離脱することはできません。
離婚の協議書に「住宅ローンは夫が支払う」と記載しても、それは当事者の間の取決めにすぎず、金融機関に対しては効力を有しません。取り決めた側が支払を怠れば、金融機関は他方に請求します。この点を確認しないまま離婚が成立している事案が、極めて多く見られます。
抵当権
抵当権は、被担保債権が弁済されない限り消滅しません。一方が物上保証人として自己の持分に抵当権を設定している場合には、名義を移した後もその負担が残ります。
また、金銭消費貸借契約及び抵当権設定契約には、担保物件の所有権を移転する場合に金融機関の承諾を要する旨の条項が置かれているのが通常です。承諾を得ずに持分を移転しますと、期限の利益を失い、残債務の一括の返済を求められることがあります。
三つの解決の型を比較します
一方が取得し、他方に代償金を支払う型
住み続ける側が不動産を取得し、他方に持分に相当する金銭を支払います。住宅ローンについては、取得する側が単独の債務者となるよう借換えを行うのが原則です。取得する側の収入と信用によって金融機関の審査が行われますので、審査の見通しを先に確かめます。
売却して代金を分ける型
共有者の双方が売主となって市場で売却し、代金から住宅ローンの残債務及び諸費用を控除した残額を分けます。名義と債務の両方が同時に整理されますので、最も後腐れのない方法です。ただし、居住している側は転居することになります。
当面は共有のまま維持する型
子の就学の都合等により、当面は現状を維持する場合です。この場合には、誰が住宅ローンを返済するのか、固定資産税をどちらが負担するのか、いつ売却するのかを、期限とともに書面に定めます。期限を定めない現状維持は、数年後に同じ紛争を繰り返すことになります。
税金の取扱い
財産分与として資産の移転があった場合、分与をした者は、その分与をした時においてその時の価額により当該資産を譲渡したこととなります(所得税基本通達33-1の4)。すなわち、財産分与によって不動産を渡した側に、譲渡所得の課税が生ずる場合があります。渡した側に金銭が入らないにもかかわらず課税が生ずる点に注意が必要です。
もっとも、居住の用に供していた家屋等を譲渡した場合には、譲渡所得の金額から3000万円を控除する特例があります(租税特別措置法第35条第1項)。この特例は、配偶者その他の特別の関係がある者に対する譲渡には適用されませんが、離婚が成立した後の元配偶者は、原則としてこれに当たらないと解されています。したがって、財産分与を離婚の成立の前に行うか後に行うかによって、税の負担が変わり得ます。適用の可否は、譲渡の時期、居住の状況によって異なりますので、税理士に確認いたします。
分与を受けた側については、原則として贈与税は課されません。ただし、分与された財産の額が、婚姻中の夫婦の協力によって得た財産の額その他一切の事情を考慮しても過当であると認められる場合には、その過当である部分について贈与税が課されます。
放置した場合に失われるもの
第一に、財産分与を家庭裁判所に請求する権利です。離婚の時から2年を経過しますと、協議に代わる処分を請求することができなくなります(民法第768条第2項ただし書)。
第二に、居住用財産の譲渡に関する特例の適用です。居住しなくなってから相当の期間が経過しますと、要件を満たさなくなります。
第三に、住宅ローン控除の適用です。所得税の住宅借入金等特別控除は、その家屋に居住していることが要件とされています。居住していない側が控除を受け続けることはできません。
第四に、相手方の資力です。時間の経過とともに、相手方が再婚し、あるいは新たな借入れを行うことがあります。代償金の回収の見込みは、時間が経つほど不確実になります。
第五に、相手方が死亡した場合の複雑化です。相手方が死亡すれば、その持分は相手方の相続人に承継されます。再婚している場合には、新たな配偶者や子が共有者となります。
相手方が話合いに応じない理由
第一に、住み続けたいという希望です。転居に伴う費用、子の就学の環境、勤務先との距離といった具体的な事情があります。この場合には、明渡しの時期に猶予を設けることによって、金銭面での歩み寄りが得られることがあります。
第二に、代償金を用意できないためです。金融機関の審査を通らないために、取得したくてもできない状態にあります。この場合には、売却して代金を分ける方向に切り替える方が早く進みます。
第三に、離婚そのものに納得していないためです。財産の問題と感情の問題が混ざりますと、条件の交渉が進みません。この場合には、当事者の間の直接の交渉を避け、代理人を通じて条件のみを交換する方が結果的に早く解決します。
いま確認していただきたいこと
1 離婚が成立した日を確認してください。2年の期間の起算点になります。
2 登記事項証明書を取得し、持分の割合と、抵当権の目的、債務者、債権額を確認してください。
3 金融機関に残高証明書の発行を求め、住宅ローンの残債務の額と最終の返済期日を確認してください。連帯債務者又は連帯保証人となっているかどうかも確認してください。
4 複数の宅地建物取引業者に査定を依頼し、売却の見込額と残債務の額を比較してください。オーバーローンであるか否かで、採り得る手続が変わります。
よくあるご質問
離婚から3年が経っています。もう何もできませんか。
財産分与に関する処分を家庭裁判所に請求することはできませんが、共有物の分割を請求することはできます(民法第256条第1項本文、第258条第1項)。登記された持分の割合を前提とした解決になります。
協議書に「住宅ローンは相手が払う」と書いてあります。安心してよいですか。
当事者の間ではその取決めに従うことになりますが、金融機関に対しては効力を有しません。相手方が支払を怠れば、連帯債務者又は連帯保証人であるご自身に請求が及びます。金融機関の承諾を得た債務の引受け、又は借換えが必要です。
相手方が家に住み続けています。家賃を請求できますか。
共有者は、別段の合意がある場合を除き、自己の持分を超える使用の対価を他の共有者に償還する義務を負います(民法第249条第2項)。もっとも、離婚の際に無償で居住することを認める合意があったと評価される場合には、請求が制限されます。合意の有無と内容が争点になります。
売却したいのですが、相手方が同意しません。
不動産全体の売却には共有者の全員の同意が必要です。同意が得られない場合には、共有物の分割を請求します。裁判所は、現物による分割、賠償による分割を検討し、これらによることができないとき等は競売を命ずることができます(民法第258条第2項及び第3項)。
財産分与で家をもらうと、税金がかかりますか。
分与を受けた側には原則として贈与税は課されませんが、過当であると認められる部分については課税されます。他方、分与をした側には譲渡所得の課税が生じ得ます(所得税基本通達33-1の4)。譲渡の時期によって特例の適用が変わりますので、事前に確認いたします。
おわりに
離婚後に残された共有名義の自宅は、時間の経過によって選択肢が減っていく類型の問題です。2年という期間、居住用財産の特例、相手方の資力のいずれもが、待っていて有利になることはありません。離婚が成立した日と、登記事項証明書、残高証明書をご用意のうえ、お早めにご相談ください。必ず解決できますから、一緒に頑張りましょう。
離婚後に残った共有名義の不動産に関するご相談
弁護士法人M&A総合法律事務所 電話番号 03-6435-8418
受付時間 8:00-21:00(土日祝含む)
出典及び参照した法令
民法第249条第2項、第256条第1項、第258条第1項から第3項まで、第768条第1項及び第2項、第771条
不動産登記法第60条
租税特別措置法第35条第1項、第41条
所得税基本通達33-1の4(財産分与による資産の移転)
相続税法第9条
具体的なご相談をお考えの皆様へ
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