共有不動産について何をするのに誰の同意が必要か 変更行為・管理行為・保存行為の区別と決め方

共有名義の建物の屋根を修理したい。空室になった部屋を貸したい。老朽化した建物を取り壊したい。いずれの場合にも、他の共有者の同意が必要なのかどうかが最初の問題になります。同意が要らない行為について同意を求めて話が止まり、同意が必要な行為を単独で進めて紛争になる。共有不動産をめぐるご相談には、この取り違えが数多く含まれています。

結論から申し上げます。共有物に対して行う行為は、変更行為、管理行為、保存行為の三つに分かれ、必要となる同意の範囲がそれぞれ異なります。変更行為は共有者の全員の同意、管理行為は持分の価格の過半数、保存行為は各共有者が単独で行うことができます。

令和3年の民法の改正により、この区別は実務上大きく変わりました。形状又は効用の著しい変更を伴わない変更(軽微変更)が管理行為として過半数で決せられることとなり、また、他の共有者の所在が分からない場合や賛否を明らかにしない場合について、裁判所の裁判により手続を進める道が設けられています。改正前の解説を前提に判断しますと、必要のない同意を求めて手続が止まります。

この記事の位置付け

共有不動産についての行為は、必要となる同意の範囲によって扱いが分かれます。

共有物に対する行為は、三つに分かれます

民法は、共有物に対して共有者が行う行為を、次の三つに区分しています。

第一が変更行為です。各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更を加えることができません(民法第251条第1項)。ただし、その形状又は効用の著しい変更を伴わないものは除かれます。

第二が管理行為です。共有物の管理に関する事項は、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決します(民法第252条第1項前段)。共有物を使用する共有者があるときも同様です(同項後段)。

第三が保存行為です。各共有者は、単独で保存行為をすることができます(民法第252条第5項)。

ここでいう過半数は、共有者の頭数の過半数ではなく、持分の価格の過半数です。共有者が5人いても、持分の合計が過半に達する者が同意していれば管理行為は決せられます。逆に、共有者が2人で持分が各2分の1であれば、いずれも単独では過半数に達しませんので、管理行為であっても相手方の同意が必要になります。

変更行為 共有者の全員の同意が必要になる行為

変更行為に当たるのは、共有物の形状又は効用を著しく変更する行為です。具体的には、建物の取壊し、増築、建替え、宅地から農地への転用のような用途の変更、共有物の売却その他の処分がこれに当たります。

共有物の全部を売却することは、各共有者の持分の処分でもありますので、共有者の全員が売主となる必要があります。一人でも売却に同意しない共有者がいる場合には、不動産全体を売ることはできません。この場面については、共有物分割の手続によることになります。

他の共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、裁判所は、共有者の請求により、当該他の共有者以外の共有者の同意を得て共有物に変更を加えることができる旨の裁判をすることができます(民法第251条第2項)。所在の分からない共有者がいることを理由に、建物の取壊しや大規模な改修が永久にできなくなるわけではありません。

管理行為 持分の価格の過半数で決することができる行為

管理行為に当たるのは、共有物の利用及び改良を目的とする行為です。令和3年の改正により、次の二つが管理行為であることが条文上明確になりました。

形状又は効用の著しい変更を伴わない変更(軽微変更)

外壁の塗装の塗り替え、屋上の防水工事、給排水設備の更新のように、建物の形状や用途を大きく変えない工事は、変更行為から除かれ、管理行為として持分の価格の過半数で決することができます(民法第251条第1項括弧書き、第252条第1項)。改正前は、これらについても全員の同意を要するのかどうかが争われておりました。現在は、著しい変更に当たるか否かで区別します。

共有物を使用する共有者があるときの管理に関する事項の決定

共有者の一人が現に使用している場合であっても、持分の価格の過半数により、誰が使用するのかを決めることができます(民法第252条第1項後段)。もっとも、共有者間の決定に基づいて共有物を使用する共有者に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければなりません(同条第3項)。

賃借権等を設定することができる期間の上限

共有者は、持分の価格の過半数により、共有物に賃借権その他の使用及び収益を目的とする権利を設定することができます。ただし、その期間には上限があり、樹木の栽植又は伐採を目的とする山林の賃借権等は10年、それ以外の土地の賃借権等は5年、建物の賃借権等は3年、動産の賃借権等は6箇月を超えることができません(民法第252条第4項各号)。

建物を第三者に賃貸する場合には注意が必要です。借地借家法の適用のある建物の賃貸借は、期間の定めがあっても法定更新により継続いたしますので、同項の期間の範囲に収まらず、変更行為として共有者の全員の同意を要すると解されています。定期建物賃貸借であって期間が3年を超えないものであれば、管理行為として過半数で決することができます。

保存行為 各共有者が単独ですることができる行為

保存行為とは、共有物の現状を維持する行為です。雨漏りの応急の修理、不法に占有する者に対する明渡しの請求、実体に合致しない登記の抹消の請求、共有物についての妨害の排除の請求がこれに当たります。

保存行為は、他の共有者の同意を得ることなく、各共有者が単独ですることができます(民法第252条第5項)。他の共有者と連絡が取れない場合であっても、現状を維持するための行為は止まりません。

ただし、修繕に要した費用の負担は別の問題です。各共有者は、その持分に応じ、管理の費用を支払い、その他共有物に関する負担を負います(民法第253条第1項)。単独で保存行為をすることができることと、その費用を全額負担しなければならないこととは、別に考えます。

他の共有者が賛否を明らかにしない場合の手続

連絡はつくものの、賛成とも反対とも言わない共有者がいるために、管理に関する事項が決まらないことがあります。この場合には、次の手続を用いることができます。

共有者が他の共有者に対し、相当の期間を定めて、共有物の管理に関する事項を決することについて賛否を明らかにすべき旨を催告した場合において、当該他の共有者がその期間内に賛否を明らかにしないときは、裁判所は、請求により、その者以外の共有者の持分の価格の過半数で管理に関する事項を決することができる旨の裁判をすることができます(民法第252条第2項第2号)。

共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないときも、同様の裁判を求めることができます(同項第1号)。催告の事実と、その期間内に賛否が示されなかった事実を、後から証明できる形で残しておくことが要点です。配達証明付きの内容証明郵便によります。

共有物の管理者を選任するという方法

令和3年の改正により、共有物の管理者の制度が設けられました。共有者は、持分の価格の過半数により、共有物を管理する者を選任し、又は解任することができます(民法第252条の2)。管理者は、共有物の管理に関する行為をすることができ、共有者の全員の同意を得なければ、共有物に変更を加えることができません。

共有者が多数にわたる場合、遠方に居住している場合、あるいは共有者の一部に判断能力の低下がある場合には、都度の意思決定を待たずに賃貸や修繕を進めることができますので、実務上の利益があります。

区別を誤ったときに生ずること

変更行為を単独で行った場合、他の共有者は、その行為の差止め又は原状の回復を求めることができます。建物を取り壊してしまった後では原状の回復ができませんので、損害の賠償の問題になります。取り壊してから同意を求めるという順序を採りますと、費用の負担が一方に偏ります。

他方、保存行為や管理行為であるにもかかわらず全員の同意を求めますと、一人でも応じない共有者がいるだけで、必要な修繕が止まります。雨漏りを放置した結果として建物の価値が下がり、その損失は共有者の全員が持分に応じて負います。

賃貸借について期間の上限を超えた設定をした場合には、その効力が争われます。賃借人を巻き込む紛争になりますので、契約の締結の前に区別を確定させておく必要があります。

相手方の共有者が同意しない理由

同意しない共有者にも、それぞれの事情があります。

第一に、費用の負担を求められることを警戒している場合です。管理の費用は持分に応じて負担しますので(民法第253条第1項)、修繕に同意すればその負担が生じます。工事の内容と概算の金額を示さないまま同意だけを求めますと、警戒されます。

第二に、共有関係そのものを解消したいと考えている場合です。この場合には、個別の修繕や賃貸の同意ではなく、共有関係の解消の方針を先に協議した方が早く進みます。

第三に、共有物を使用している共有者との間で、使用の対価の問題が未解決である場合です。共有者は、別段の合意がある場合を除き、自己の持分を超える使用の対価を他の共有者に償還する義務を負います(民法第249条第2項)。この点が積み残されたままでは、他の議題も動きません。

いま確認していただきたいこと

1 登記事項証明書を取得し、共有者の氏名と持分の割合を正確に確認してください。持分の価格の過半数を計算する前提になります。

2 行おうとしている行為が、形状又は効用の著しい変更を伴うかどうかを整理してください。工事の見積書と図面が判断の資料になります。

3 賃貸を検討しておられる場合には、契約の類型と期間を確認してください。定期建物賃貸借とするか否かで、必要な同意の範囲が変わります。

4 連絡が取れない共有者がいる場合には、住民票の除票、戸籍の附票を取得し、所在の調査を行った経過を記録してください。裁判所の裁判を求める際の資料になります。

よくあるご質問

共有者が2人で持分が各2分の1の場合、管理行為はどう決めますか。

いずれも持分の価格の過半数に達しませんので、双方の同意がなければ管理に関する事項を決することができません。相手方が賛否を明らかにしない場合には、相当の期間を定めて催告したうえで、民法第252条第2項第2号の裁判を求めることができます。

雨漏りの修理を一人でしました。他の共有者に費用を請求できますか。

保存行為として単独で行うことができ、その費用は各共有者がその持分に応じて負担します(民法第253条第1項)。負担を求めるためには、工事の必要性、実際に支出した金額、支払の事実を示す資料が必要です。見積書、請求書、領収書、施工の前後の写真を保存してください。

共有者の一人が勝手に第三者へ賃貸していました。どうすればよいですか。

持分の価格の過半数による決定がない賃貸であれば、他の共有者はその効力を争うことができます。もっとも、既に賃借人が入居している場合には、賃借人との関係も生じますので、明渡しを求めるのか、賃料の分配を求めるのかを、回収の見込みを踏まえて選択いたします。

共有物の管理者は、共有者以外の者でもよいのですか。

共有者以外の者を選任することもできます。不動産の管理を業とする事業者を選任する例があります。ただし、管理者も共有物に変更を加えるには共有者の全員の同意を要しますので、権限の範囲を事前に整理しておく必要があります。

共有者の一人が判断能力を失っています。管理に関する事項を決められますか。

意思表示をすることができない状態であれば、成年後見人等の選任を経る必要があります。所在が分からない場合と異なり、民法第252条第2項の裁判では対応できません。家庭裁判所への申立てを検討いたします。

おわりに

共有不動産をめぐる紛争の多くは、何をするのに誰の同意が必要かという最初の整理を欠いたまま話合いに入ったことから生じています。行為の性質を確定させ、必要な同意の範囲を先に定めれば、進められることと、進められないことが分かれます。判断に迷っておられる方は、工事の見積書と登記事項証明書をご用意のうえ、お早めにご相談ください。必ず解決できますから、一緒に頑張りましょう。

共有不動産の管理と同意の範囲に関するご相談
弁護士法人M&A総合法律事務所 電話番号 03-6435-8418
受付時間 8:00-21:00(土日祝含む)

出典及び参照した法令

民法第249条第1項及び第2項、第251条第1項及び第2項、第252条第1項から第5項まで、第252条の2、第253条第1項
借地借家法第26条、第38条
令和3年法律第24号(民法等の一部を改正する法律)

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