実家の鍵を渡してもらえない場合にできること

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実家の鍵の引渡しを求める場面に関するメインのページです。本ページは、不動産の相続において占有する相続人へ立入りを求める根拠と手順をご説明します。使用の対価の請求そのものは別のページをご参照ください。

▶ 相続した実家に住み続ける相続人へ求め得ること

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父が亡くなり、実家は兄と私の共有となっています。ところが、兄が鍵を交換してしまい、私は中に入ることができません。父の遺品も、預金通帳その他の資料も家の中にあります。「勝手に入るな」と言われていますが、共有者である私が入れないのは納得できません。このようなご相談をいただくことがあります。

結論から申し上げます。各共有者は、共有物の全部について、その共有持分に応じた使用をすることができます(民法第249条第1項)。したがって、共有者である以上、当該建物を使用する権限を有しています。もっとも、他の共有者もまた同じ権限を有していますので、一方が他方を排除して立ち入る権利を当然に有するものではありません。実務上、鍵を交換されて立入りができない場合には、まず書面により立入りを求め、応じない場合には対価の請求、資料の開示の請求、共有物分割といった手段を検討することになります。実力により鍵を壊して立ち入ることは、別の問題を生じさせる可能性がありますので避けるべきです。本記事では、採り得る手段を整理いたします。

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共有不動産に立ち入ることができない場合、相手方が誰かによって対応が変わります。

共有者の使用の権限

 共有持分に応じた使用

各共有者は、共有物の全部について、その共有持分に応じた使用をすることができます(民法第249条第1項)。「共有持分に応じた」という文言は、物理的な範囲の限定を意味するものではなく、共有者は共有物の全部について使用する権限を有しています。

したがって、共有者である以上、当該建物に立ち入る権限を有していると考えられます。鍵を交換して立入りを妨げる行為は、この権限を制約するものです。

 もっとも、排他的な立入りの権利ではありません

他方で、現に居住している共有者もまた、共有物の全部について使用する権限を有しています。共有者の一人が共有物を単独で占有している場合であっても、他の共有者は当然にはその明渡しを請求することができないと解されています。これは判例法理によります。

この理は、立入りについても一定の影響を及ぼします。すなわち、居住している共有者の生活を害する態様での立入りを当然に求め得るものではないと考えられます。

表1 共有者の権利の整理

求めたいこと 原則的な帰結 根拠
共有物を使用すること 共有持分に応じた使用をすることができます 民法第249条第1項
建物からの退去及び明渡し 当然には請求することができません 判例法理
共有持分を超える使用の対価 別段の合意がなければ請求することができます 民法第249条第2項
共有関係の解消 いつでも分割を請求することができます 民法第256条第1項
立入りの受忍 共有持分に基づく使用として求める余地があります 民法第249条第1項
保存行為としての立入り 状態の確認等のために求める余地があります 民法第252条第5項

 実力による立入りは避けるべきです

鍵を壊す、窓から入るといった実力による立入りは、避けるべきです。共有者としての権限があるとしても、態様によっては別の問題を生じさせる可能性があります。また、相手方との関係が決定的に悪化し、その後の交渉が困難になります。

 目的を明確にすること

立入りを求める目的は、事案により異なります。目的によって、適する手段が変わります。

表2 立入りを求める目的と手段

目的 適する手段
建物の状態を確認したい 立会いのうえでの確認を求めます。保存行為としての位置付けも考えられます
遺品を確認したい 遺産の範囲の確認として、目録の作成及び立会いを求めます
預金通帳等の資料を確認したい 金融機関への直接の照会という代替の方法があります
自らも居住したい 現実には困難です。共有物分割を検討いたします
評価のために内部を見たい 査定又は鑑定のための立入りを求めます
相手方を退去させたい 当然には請求できません。共有物分割によります

代替する手段

 資料は他の方法でも入手し得ます

家の中にある資料を確認したいという場合には、立入りによらずに入手し得ることが多くあります。

表3 立入りによらない資料の入手

資料 入手の方法
預貯金の残高及び取引の履歴 相続人として金融機関に開示を求め得る場合があります
不動産の権利関係 登記事項証明書を取得いたします
被相続人が所有していた不動産 名寄帳の閲覧、登記所における証明の制度
固定資産税の課税の状況 市町村に照会いたします
生命保険 保険会社への照会、一般社団法人による制度
有価証券 証券保管振替機構への照会
負債 信用情報機関への開示の請求
遺言書 公証役場における検索、法務局における遺言書保管の制度

これらの方法により資料を入手できれば、立入りにこだわる必要が小さくなります。

 遺産の範囲の確認

家の中にある動産についても、遺産の一部です。遺産分割の対象となりますので、目録の作成を求めることになります。相手方が応じない場合には、遺産分割の調停の中で、遺産の範囲を明らかにするよう求めることになります。

 建物の状態の確認

建物の状態を確認したいという場合には、外観の確認、近隣からの聴取、業者による外部からの査定といった方法があります。また、遺産分割又は共有物分割の手続の中で、鑑定が実施される場合には、鑑定人による内部の調査が行われることがあります。

 対価の請求

相手方が建物を独占して使用している以上、共有持分を超える使用の対価の償還を求めることができます(民法第249条第2項)。立入りができないという事情は、独占して使用していることの裏付けともなります。

実務上よく起きる問題

 「勝手に持ち出した」と主張される

立入りが認められた場合であっても、単独で立ち入って物を持ち出すと、後に「勝手に持ち出した」と主張されることがあります。立会いのもとで行うこと、目録を作成すること、写真を撮影することが重要です。

 遺品が処分されてしまう

立入りができない間に、遺品が処分されてしまうことがあります。この場合、遺産分割の対象が失われることになります。処分された財産については、共同相続人の全員の同意により、なお遺産として存在するものとみなすことができる旨の定めがあります(民法第906条の2)。処分をした相続人については、その同意を要しないものとされています。

 相続財産を処分すると単純承認とみなされる

相続を放棄することを検討している段階では、注意が必要です。相続財産を処分する行為は、単純承認をしたものとみなされる場合があります(民法第921条第1号)。遺品の持出し、整理といった行為が問題となり得ます。

 鍵の交換の費用

相手方が鍵を交換した場合、その費用の負担が問題となることがあります。共有物の保存又は管理に要する費用として、共有持分に応じた分担を求められる余地がありますが、他の共有者を排除する目的で行われた場合には、その当否が争われます。

 建物が空き家である場合

相手方が居住しておらず、建物が空き家である場合には、状況が異なります。この場合、相手方が独占して使用しているとはいえない一方、鍵を管理しているために立入りができないという状態です。保存行為の必要性を主張して立入りを求めることが考えられます。

 感情的な対立が背景にある

鍵の問題は、それ自体の経済的な価値は小さいものの、当事者の感情を強く刺激いたします。この点のみを争っても解決に至らず、共有関係そのものの解消に進むことが現実的な場合が多くあります。

検討する選択肢

 選択肢の全体像

表4 立入りができない場合に採り得る手段

手段 内容 期間の目安 適する場面
書面による申入れ 目的及び日時を示して立入りを求めます 数週間 最初に行うべき対応です
立会いのうえでの確認 双方立会いのもとで内部を確認いたします 数週間 相手方が応じる場合
代替の方法による資料の入手 金融機関等への照会により資料を得ます 1か月から数か月 資料の確認が目的である場合
対価の請求 共有持分を超える使用の対価の償還を求めます 数か月から1年 相手方が居住している場合
遺産分割の調停 遺産の範囲及び分割について家庭裁判所の手続によります 1年から2年程度 遺産分割が未了の場合
共有物分割の協議又は訴え 共有関係そのものを解消いたします 1年から2年程度 遺産分割が済んでいる場合
共有持分の売却 自己の共有持分を売却いたします 数か月 早期の離脱を優先する場合

 申入れの書面に記載する事項

表5 立入りの申入れに記載する事項

事項 記載の内容
対象物件 登記事項証明書の記載に従って特定いたします
自己の共有持分 共有持分の割合とその根拠
立入りの目的 建物の状態の確認、遺産の目録の作成等
希望する日時 複数の候補を示します
立会いの申入れ 相手方の立会いのもとで行う旨
範囲 確認する範囲、持ち出さない旨
回答の期限 相当な期間を定めます
応じない場合の対応 法的手続を検討する旨

 共有関係の解消を軸に据える

立入りの問題は、共有関係が続く限り繰り返されます。根本の解決は、遺産分割又は共有物分割により、当該不動産の帰属を確定させることです。立入りを求めることのみに労力を費やすよりも、分割の手続を進める方が結果的に早いことが多くあります。

 記録を残すこと

申入れの書面、相手方の応答、立入りができなかった経緯は、後の手続における資料となります。書面によるやり取りを心掛け、記録を残しておくことが重要です。

案件において確認すべき事項

 資料の確認

表6 ご相談の際に確認する資料

区分 資料 確認する内容
権利関係 登記事項証明書 共有者、共有持分、担保権の有無
相続 被相続人及び相続人の戸籍 相続人の範囲、法定相続分
相続 遺言書、遺産分割協議書 遺産分割の成否
使用 住民票、現地の写真 相手方が居住しているか
経緯 これまでのやり取りの記録 立入りを求めた経過
遺産 把握している遺産の一覧 確認したい資料の内容
費用 固定資産税の納税通知書 負担の状況
賃料 近隣の募集の資料 対価の算定の基礎

 確認する事項

表7 対応の検討において確認する事項

事項 確認の内容
立入りの目的 何を確認したいのか
代替の方法 立入りによらずに目的を達成し得ないか
相手方の居住 現に居住しているか、空き家か
遺産分割の状況 未了か、成立しているか
共有持分の割合 管理に関する事項を決し得るか
相続放棄の検討 放棄を検討している場合の注意
遺品の処分の危険 早急な対応を要するか
最終的な目標 取得したいのか、換価したいのか

弁護士に相談する意味

鍵を渡してもらえないという問題は、それ自体としては小さく見えますが、対応を誤ると事態を悪化させることがあります。

第一に、実力による解決を避ける必要がある点です。共有者としての権限があるとしても、鍵を壊して立ち入る、無断で物を持ち出すといった行為は、別の問題を生じさせる可能性があります。適法な手順を踏むことが重要です。

第二に、目的に応じた代替の方法がある点です。資料の確認が目的であれば、金融機関への照会その他の方法により入手し得ることが多くあります。立入りにこだわるよりも、目的を達成する別の道筋を探る方が効率的です。

第三に、根本の解決は分割にある点です。共有関係が続く限り、立入りの問題は繰り返されます。遺産分割又は共有物分割により帰属を確定させることが、最も確実な解決です。

弁護士が行う業務は、次のとおりです。第一に、登記及び相続関係を確認し、共有持分と当事者を確定させることです。第二に、立入りの目的を整理し、代替の方法により達成し得るかを検討することです。第三に、書面により立入りを申し入れ、記録を残すことです。第四に、金融機関その他への照会により遺産の範囲を確認することです。第五に、対価の請求、遺産分割及び共有物分割の手続を代理することです。

なお、具体的な進め方は、共有者の構成、従前の経緯、不動産の状況等により異なり、当事務所が個別案件を通じて蓄積してきた実務上のノウハウにも属するため、本記事では詳細を開示していません。

よくあるご質問

質問1 共有者なのに入れないのはおかしくありませんか。

各共有者は共有物の全部について共有持分に応じた使用をすることができます(民法第249条第1項)。もっとも、居住している共有者も同じ権限を有していますので、その生活を害する態様での立入りを当然に求め得るものではないと考えられます。

質問2 鍵を壊して入ってもよいですか。

実力による立入りは避けるべきです。共有者としての権限があるとしても、態様によっては別の問題を生じさせる可能性があります。また、相手方との関係が悪化し、その後の交渉が困難になります。

質問3 中にある通帳を確認したいのですが。

相続人として金融機関に対し、残高及び取引の履歴の開示を求め得る場合があります。立入りによらずに資料を入手し得ることが多くありますので、まず代替の方法を検討いたします。

質問4 遺品を処分されてしまいそうです。

遺産分割の前に共同相続人の一人により処分された財産については、共同相続人の全員の同意により、なお遺産として存在するものとみなすことができる旨の定めがあります(民法第906条の2)。処分をした相続人については、その同意を要しないものとされています。早期にご相談ください。

質問5 立入りを認めてもらえた場合、注意することは。

相手方の立会いのもとで行うこと、確認した物の目録を作成すること、写真を撮影することが重要です。単独で立ち入って物を持ち出すと、後に争いとなることがあります。

質問6 結局どうすればよいのですか。

立入りの問題は共有関係が続く限り繰り返されます。遺産分割又は共有物分割により当該不動産の帰属を確定させることが、根本の解決です。並行して、共有持分を超える使用の対価の請求を検討いたします。

弁護士法人M&A総合法律事務所へのご相談

弁護士法人M&A総合法律事務所(代表弁護士 土屋勝裕。東京都港区虎ノ門)では、相続した実家をめぐるご相談をお受けしています。

  • 電話番号 03-6435-8418
  • 受付時間 8:00~21:00
  • 土曜日、日曜日及び祝日も受付いたします
  • ご相談は事前予約制です

ご相談の際に、登記事項証明書、被相続人及び相続人の戸籍、遺言書又は遺産分割協議書、固定資産税の納税通知書、相手方とのやり取りの記録をご用意いただけますと、検討が早く進みます。これらがお手元にないことを理由にご相談をお断りすることはありません。

弁護士費用については、弁護士費用一覧のページをご覧ください。結果は事案ごとに異なります。本記事の記載は一般的な説明であり、特定の結果を保証するものではありません。

本記事の根拠条文

民法 第249条第1項(共有物の使用)、第249条第2項(持分を超える使用の対価の償還義務)、第252条第1項(共有物の管理)、第252条第5項(保存行為)、第253条第1項(管理の費用の負担)、第256条第1項(共有物の分割請求)、第258条(裁判による共有物の分割)、第898条(相続財産の共有)、第906条の2(遺産の分割前に処分された財産の取扱い)、第907条(遺産の分割の協議又は審判)、第921条第1号(法定単純承認)

判例法理による部分 共有者の一人が共有物を単独で占有する場合における他の共有者からの明渡請求の可否。

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