共有持分買取業者から共有物分割の訴えを起こされたとき 答弁の方針と自ら取得するための準備
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▶ 共有不動産の紛争を弁護士に依頼するとき 共有持分の買取り、分割及び明渡しの進め方
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他の共有者が共有持分を業者に売却した。しばらくして、その業者から共有物分割を求める訴状が届いた。訴状には、不動産を競売に付して代金を分けることを求める、と書かれている。実家に住み続けている。あるいは長年賃貸として管理してきた。この不動産を失うわけにはいかない。共有持分買取業者が関与するご相談は、この場面で急に始まります。
結論から申し上げます。業者が原告となる共有物分割の訴訟において、競売による分割を避け、ご自身が不動産を取得する方法があります。そのためには、答弁書の段階で、ご自身が取得することを求める旨と、その価格及び支払の裏付けを示す必要があります。
共有持分の譲渡そのものは、他の共有者の同意を要しません。各共有者は自己の持分を自由に処分することができますので、業者が共有者となったこと自体を争うことは、通常は困難です。争うべきは、持分の取得の効力ではなく、分割の方法と価格です。ここを取り違えますと、限られた時間を消耗します。
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共有持分買取業者との紛争は、業者が何を求めてきているかによって対応が分かれます。
- 業者から共有物分割の訴えを起こされた場面……本記事
- 共有者から共有物分割の訴えを起こされ答弁を組み立てる場面……共有物分割の訴状が届いた場合の答弁の組み立て
- 業者から共有持分の使用の対価を請求された場面……共有物の独占使用に対する対価の金額をどのように算定するか
- 業者から明渡しを求められた場面……明渡しを当然には求められない理由と代わりの手段
- 競売を避けて自ら取得する場面……競売による分割を避けて自ら取得する方法
最初に確認する期限 答弁書の提出期限を過ぎてはなりません
訴状には、第1回の口頭弁論の期日と、答弁書の提出の期限が記載されています。当事者が口頭弁論において相手方の主張した事実を争うことを明らかにしない場合には、その事実を自白したものとみなされます(民事訴訟法第159条第1項)。この規定は、当事者が口頭弁論の期日に出頭しない場合について準用されます(同条第3項)。
答弁書を提出せず、期日にも出頭しなければ、業者の主張がそのまま認められる可能性があります。まず、期日と提出期限を確認してください。内容が固まっていない段階であっても、請求を争う旨を記載した答弁書を提出することができます。
共有物分割の訴えは、不動産の所在地を管轄する裁判所にも提起することができます(民事訴訟法第5条第12号)。遠方の裁判所から書類が届いた場合であっても、放置してはなりません。
業者が共有持分を取得したことは、原則として争えません
各共有者は、自己の共有持分を他の共有者の同意を得ることなく処分することができます。持分の譲渡は、譲渡人と譲受人の間の合意によって効力を生じ、登記を備えることによって第三者に対抗することができます(民法第177条)。
したがって、他の共有者が業者に持分を売却したことについて、ご自身が同意していないこと、事前に知らされていなかったことを理由に、その譲渡を無効とすることは、通常はできません。
もっとも、譲渡の経緯に例外的な事情がある場合には、別の検討をいたします。譲渡人が判断能力を欠いていた場合、詐欺又は強迫があった場合、公序良俗に反する内容の契約であった場合には、契約の効力そのものが問題となります。譲渡人であるご親族と連絡が取れるのであれば、契約書の写しと、契約に至る経緯を確認してください。
争点は分割の方法です 競売以外の道が用意されています
裁判所は、共有物の現物を分割する方法、又は共有者に債務を負担させて他の共有者の持分の全部若しくは一部を取得させる方法により、共有物の分割を命ずることができます(民法第258条第2項)。これらの方法により分割することができないとき、又は分割によってその価格を著しく減少させるおそれがあるときに、競売を命ずることができます(同条第3項)。
すなわち、競売は最後の手段として位置付けられています。業者が訴状において競売を求めていても、裁判所が当然に競売を命ずるわけではありません。
共有者の一人に共有物を取得させ、他の共有者にその持分の価格を賠償させる方法、いわゆる全面的価格賠償については、最高裁判所平成8年10月31日第一小法廷判決が要件を示しています。同判決は、共有物を共有者のうちの特定の者に取得させるのが相当であると認められ、かつ、その価格が適正に評価され、当該共有物を取得する者に支払能力があって、他の共有者にはその持分の価格を取得させることとしても共有者間の実質的公平を害しないと認められる特段の事情があるときは、この方法によることも許されるとしています。
取得を求めるために、答弁の段階で示す事項
右の要件に対応して、次の事項を主張し、資料により裏付けます。
取得させるのが相当であること
その不動産に居住していること、先代から承継して管理してきたこと、賃貸事業として運営してきたこと、周囲の土地と一体として利用していることなど、その不動産とご自身との結び付きを具体的に述べます。固定資産税を負担してきた経緯、修繕を行ってきた経緯も、この事情に含まれます。
価格が適正に評価されること
複数の宅地建物取引業者による査定、路線価に基づく試算、必要に応じて不動産鑑定士による鑑定を用意します。業者が主張する価格の根拠を確認し、共有持分の取得の対価としていくらを支払ったのかを求釈明によって明らかにさせることも検討します。
支払能力があること
代償金を支払う資力を、預金残高証明書、金融機関の融資証明書又は融資の内諾を示す書面によって示します。支払能力の裏付けを欠いたまま取得を希望しても、認められません。資金の準備は、訴訟の進行と並行して進めます。
業者が訴えを提起する理由と、和解に応ずる理由
共有持分買取業者は、共有持分を取得したうえで、他の共有者に対して買取りを求め、応じられない場合に共有物分割の訴えを提起する、という流れで事業を行っています。訴えの目的は、不動産そのものを取得することではなく、投下した資金を回収することにあります。
この点を理解すると、交渉の余地が見えます。業者にとって、競売は必ずしも望ましい結末ではありません。競売の手続は時間を要し、買受可能価額は売却基準価額からその10分の2に相当する額を控除した額とされていますので(民事執行法第60条第3項)、回収の額も期間も見通しが立ちにくいためです。
したがって、ご自身が相応の代償金を支払って取得することを、資力の裏付けとともに示せば、業者にとっても合理的な選択肢となります。実務上、訴訟の途中で和解が成立する事案が相当数あるのはこのためです。
業者の側の言い分に対して確認すべきこと
業者からの書面には、次のような主張が含まれることがあります。それぞれ、確認すべき点があります。
第一に、共有持分の割合に応じた使用料を支払うべきである、という主張です。共有者は、別段の合意がある場合を除き、自己の持分を超える使用の対価を他の共有者に償還する義務を負います(民法第249条第2項)。もっとも、その額は不動産全体の賃料相当額に持分の割合を乗じて機械的に算定されるものではなく、使用の経緯、無償で使用する旨の合意の有無、相続の前後の事情を踏まえて判断されます。
第二に、直ちに明け渡すべきである、という主張です。共有者は共有物の全部について持分に応じた使用をすることができますので(民法第249条第1項)、持分を有する者が居住していることを理由に、当然に明渡しを求めることはできないと解されています。
第三に、提示された買取価格が相場である、という主張です。共有持分のみの取引価格と、不動産全体の価格に持分の割合を乗じた額とは、水準が異なります。比較の基準を揃えないまま金額だけを比べてはなりません。
やり取りの中で注意すべきこと
訴訟の外で業者から直接の連絡がある場合には、次の点に注意します。
第一に、電話での回答を避け、書面で受け取ることです。金額、期限、条件は、後から確認できる形で残します。
第二に、期限を切られた提示に、その場で応じないことです。訴訟が係属している以上、期日までに検討する時間があります。
第三に、業者から法律上の見解を示された場合に、それを前提として判断しないことです。弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で法律事件に関して法律事務を取り扱うことを業とすることができません(弁護士法第72条)。相手方の説明は、相手方の立場からの説明です。
放置した場合に失われるもの
第一に、答弁の機会です。答弁書を提出せず期日にも出頭しなければ、相手方の主張した事実を自白したものとみなされることがあります(民事訴訟法第159条第1項及び第3項)。分割の方法について何ら主張しないまま手続が進みますと、競売による分割が命じられる可能性が高まります。
第二に、資金を準備する時間です。代償金を支払って取得する方針を採る場合には、金融機関の審査に一定の期間を要します。口頭弁論が終結する間際になって融資の相談を始めても、間に合いません。
第三に、証拠の保存の機会です。修繕の領収書、固定資産税の納税通知書、業者とのやり取りの記録は、時間の経過とともに散逸します。取得の相当性と価格の主張を支える資料は、早い段階で集めます。
第四に、控訴の機会です。判決に不服がある場合の控訴は、判決書の送達を受けた日から2週間の不変期間内に提起しなければなりません(民事訴訟法第285条)。期間を過ぎますと、判決は確定します。
いま確認していただきたいこと
1 訴状に記載された答弁書の提出期限と第1回の口頭弁論の期日を確認し、書き留めてください。
2 登記事項証明書を取得し、業者が持分を取得した日付と、取得した持分の割合を確認してください。
3 固定資産税の納税通知書、修繕の見積書及び領収書、居住又は賃貸の経緯が分かる資料を集めてください。取得の相当性を基礎付ける資料になります。
4 代償金を用意することができるかどうか、金融機関に相談を始めてください。支払能力の裏付けは、早い段階で準備するほど選択肢が広がります。
よくあるご質問
訴状が届きました。まず何をすればよいですか。
答弁書の提出期限を確認し、請求を争う旨の答弁書を提出してください。期限までに内容が固まらない場合でも、争う姿勢を明らかにしておくことが必要です。期日に出頭せず答弁書も提出しなければ、相手方の主張を自白したものとみなされることがあります(民事訴訟法第159条第1項及び第3項)。
他の共有者が業者に売ったこと自体を、無効にできませんか。
共有持分の処分は各共有者が自由に行うことができますので、同意していないことを理由に無効とすることは通常できません。譲渡人の判断能力、詐欺又は強迫の有無など、契約の効力そのものに関わる事情がある場合には、別途の検討をいたします。
必ず競売になってしまうのでしょうか。
そうではありません。競売は、現物による分割及び賠償による分割ができない場合等の手段として位置付けられています(民法第258条第2項及び第3項)。ご自身が取得することを求め、価格と支払能力を示すことによって、競売以外の解決を求めることができます。
業者から、訴訟の前に高額の買取りを求められていました。応じるべきでしたか。
金額の当否は、不動産全体の価格、持分の割合、使用の状況によって判断します。訴訟が始まった後でも、価格の主張を組み立て直すことができます。過去のやり取りの記録は保存してください。
弁護士に依頼すると、費用が代償金の負担に上乗せされませんか。
費用の見通しは、着手の前に書面でお示しします。競売による分割となった場合に手元に残る金額と、ご自身が取得した場合の資産の価値とを比較したうえで、ご判断いただけるように整理いたします。
おわりに
業者が原告となる共有物分割の訴訟は、期限に追われる手続です。他方で、答弁の組み立て方と資料の準備によって、結論は大きく変わります。訴状がお手元に届いた段階で、期限を確認したうえで、お早めにご相談ください。必ず解決できますから、一緒に頑張りましょう。
共有持分買取業者から共有物分割の訴えを起こされた場合のご相談
弁護士法人M&A総合法律事務所 電話番号 03-6435-8418
受付時間 8:00-21:00(土日祝含む)
出典及び参照した法令
民法第177条、第206条、第249条第1項及び第2項、第258条第1項から第3項まで
民事訴訟法第5条第12号、第159条第1項及び第3項、第285条
民事執行法第60条第3項
弁護士法第72条
最高裁判所平成8年10月31日第一小法廷判決(全面的価格賠償による共有物分割の要件)
具体的なご相談をお考えの皆様へ
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