共有物の分割をしない旨の契約をしたとき 5年の期間、更新、登記及び第三者に対する効力

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共有物の不分割の特約に関するメインのページです。本ページは、共有不動産をめぐるトラブルを避けるために結ぶ合意の期間、更新、登記及び第三者に対する効力をご説明します。分割の請求そのものは別のページをご参照ください。
▶ 共有不動産の紛争を弁護士に依頼するとき 共有持分の買取り、分割及び明渡しの進め方
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相続で兄弟の共有となった実家について、当面は誰も動かさないでおこうと決めた。あるいは、共同で購入した収益不動産について、数年間は売却しない旨を取り決めた。ところが後になって、共有者の一人が共有物の分割を求めてきた。取決めがあるのだから拒めるはずだ、と考えておられる方は少なくありません。
結論から申し上げます。分割をしない旨の契約は有効ですが、期間は5年を超えることができず、登記をしなければ、その後に共有持分を取得した者に対して効力を主張することができません。取決めをしたこと自体は、それだけでは十分な備えになりません。
分割をしない旨の定めには、共有者の間の契約によるもの、被相続人の遺言によるもの、共同相続人の間の契約によるもの、家庭裁判所の審判によるものがあり、それぞれ期間の上限と終期の制限が異なります。どの定めによっているのかを取り違えますと、いつまで分割を求められないのかを誤ります。
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共有関係をいつまで維持するかによって、検討すべき定めが変わります。
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分割の請求は、原則としていつでもすることができます
各共有者は、いつでも共有物の分割を請求することができます(民法第256条第1項本文)。共有は暫定的な状態として位置付けられており、共有者の一人が分割を望めば、他の共有者はこれを拒むことができないのが原則です。
この原則に対する例外が、分割をしない旨の契約です。5年を超えない期間内は分割をしない旨の契約をすることが認められています(民法第256条第1項ただし書)。5年を超える期間を定めた場合であっても、その定めが全体として無効になるわけではなく、5年に短縮されると解されています。
この契約は更新することができます。ただし、更新の時から5年を超えることはできません(民法第256条第2項)。すなわち、5年ごとに合意をし直すことによって、実質的に長期にわたり分割を制限することは可能ですが、その都度、共有者の全員の合意が必要になります。
なお、境界標、囲障、障壁、溝及び堀のように、相隣関係の規定によって相隣者の共有と推定されるものについては、分割の請求に関する規定の適用がありません(民法第257条)。
相続によって生じた共有の場合は、別の定めがあります
相続によって生じた共有については、民法第908条が定めを置いています。共有者の間の契約に関する第256条とは、期間の制限が異なります。
被相続人が遺言で禁止する場合
被相続人は、遺言で、相続開始の時から5年を超えない期間を定めて、遺産の分割を禁ずることができます(民法第908条第1項)。相続人の一部が幼少である場合、事業の承継の準備に時間を要する場合などに用いられます。
共同相続人が契約で定める場合
共同相続人は、5年以内の期間を定めて、遺産の全部又は一部について分割をしない旨の契約をすることができます。ただし、その期間の終期は、相続開始の時から10年を超えることができません(民法第908条第2項)。この契約は更新することができますが、更新の時から5年以内であり、かつ、終期は相続開始の時から10年を超えることができません(同条第3項)。
家庭裁判所が定める場合
家庭裁判所は、特別の事由があるときは、期間を定めて、遺産の全部又は一部について分割を禁ずることができます(民法第908条第4項)。この場合も、期間は5年以内であり、終期は相続開始の時から10年を超えることができません。更新についても同様の制限があります(同条第5項)。
相続によって生じた共有については、相続開始の時から10年という上限が全体にかかっている点が要点です。この10年は、相続開始の時から10年を経過した後の遺産分割は原則として具体的相続分によらないとする民法第904条の3の期間とも重なります。
登記をしなければ、第三者には主張できません
分割をしない旨の定めは、共有者の間では効力を有します。しかし、共有者の一人がその共有持分を第三者に売却した場合、その第三者に対しては、登記がなければ効力を主張することができません。
共有物について分割をしない旨の契約をしたときは、その定めが権利に関する登記の登記事項とされています(不動産登記法第59条第6号)。この定めは、登記記録の権利部に記録されます。登記がされていなければ、共有持分を買い受けた第三者は、その定めを知らずに取得したことになり、分割の請求を妨げられません。
共有物分割禁止の定めに係る権利の変更の登記の申請は、当該定めに係る権利の登記名義人の全員が共同してしなければなりません(不動産登記法第65条)。共有者の一人が単独で申請することはできません。
共有持分買取業者が介入する事案では、この点が決定的な意味を持ちます。共有者の間で口頭又は書面により分割をしない旨を取り決めていても、登記をしていなければ、持分を取得した業者からの共有物分割の請求を拒むことができません。
定めを設けること自体に、共有者の全員の同意が必要です
分割をしない旨の契約は、共有者の全員が当事者となる必要があります。共有者のうち一部の者だけで取り決めても、これに加わらなかった共有者は拘束されません。
登記についても、権利の登記名義人の全員が共同して申請しなければなりませんので(不動産登記法第65条)、一人でも協力しない共有者がいれば、登記をすることができません。定めを設けるのであれば、共有者の全員が揃っている時期に、登記まで済ませておく必要があります。時間が経ち、共有者が相続によって増えた後では、全員の協力を得ることが困難になります。
定めを設けることが有効な場面と、かえって不利になる場面
有効な場面としては、次のものが挙げられます。第一に、賃貸中の建物について、賃貸借の期間が満了するまでは処分しないと決める場合です。第二に、事業の用に供している不動産について、事業の承継が完了するまで共有関係を維持する場合です。第三に、相続人の一部が未成年であり、判断ができる年齢に達するまで待つ場合です。
他方、かえって不利になる場面もあります。第一に、共有者の一人が資金を必要としている場合です。分割を求めることができない状態で資金が必要になれば、その共有者は自己の共有持分のみを第三者へ売却する方向に向かいます。共有持分のみの売却は、不動産全体の価格に持分の割合を乗じた額を相当に下回りますので、その共有者にとって不利であるうえ、買い受けた第三者との間に新たな紛争が生じます。
第二に、不動産の価値が下がっていく場合です。老朽化した建物について分割を制限しますと、修繕も処分もされないまま価値が失われていきます。
したがって、期間を定めるにあたっては、その期間内に何をするのかを併せて定めることが重要です。単に「当面は動かさない」とだけ決めますと、何も進まないまま期間が経過します。
放置した場合に失われるもの
第一に、更新の機会です。分割をしない旨の契約の更新は、期間の満了の前後を問わず共有者の全員の合意によりますが、期間が満了した後は、いつでも分割を請求することができる状態に戻ります。更新の合意が調わなければ、直ちに分割の請求を受け得る状態になります。
第二に、登記をする機会です。共有者の一人が死亡すれば、その持分は相続人に承継され、登記の申請に必要な当事者が増えます。共有者の一人が持分を第三者に売却すれば、その第三者に対しては定めを主張できません。
第三に、遺産共有の場合の具体的相続分による分割の機会です。相続開始の時から10年を経過した後の遺産分割は、原則として具体的相続分によらないこととされています(民法第904条の3)。分割を禁ずる期間の終期が相続開始の時から10年を超えられないとされているのは、この規律と平仄を合わせたものと理解されます。
共有者が分割を求めてきた理由
取決めがあるにもかかわらず分割を求めてくる共有者には、事情があることが通常です。
第一に、資金を必要としている場合です。事業の資金、教育の資金、医療の費用など、期限のある必要が生じています。この場合には、分割ではなく、他の共有者が持分を買い取る、あるいは共有物を担保として資金を調達するといった別の解決が可能です。
第二に、管理の負担を負い続けることに耐えられない場合です。固定資産税、修繕の費用を負担してきた共有者が、精算を求めているにすぎないことがあります。
第三に、共有者の間の関係が悪化している場合です。この場合には、期間の定めによって時間を稼いでも、関係は改善しません。分割を制限する定めは、時間を稼ぐための手段であって、紛争を解決する手段ではありません。
定めを設ける場合に書面へ残す事項
分割をしない旨の契約を締結する場合には、次の事項を書面に明記します。第一に、対象となる不動産を登記事項証明書の表示のとおりに特定すること。第二に、期間の始期と終期を年月日で明記すること。第三に、期間内における管理の方法、費用の分担及び使用する者を定めること。第四に、期間の満了時に何を行うのかを定めること。第五に、登記の申請に共有者の全員が協力する旨を定めることです。
とりわけ第四が重要です。期間の満了までに売却の準備を終える、期間の満了時に改めて協議する、といった段取りを併せて定めておきませんと、期間が経過しただけで何も進んでいない状態になります。
いま確認していただきたいこと
1 取決めをした書面を探し、期間の始期と終期、当事者の範囲を確認してください。
2 登記事項証明書を取得し、分割をしない旨の定めが登記されているかどうかを確認してください。
3 相続によって生じた共有である場合には、相続の開始の日を確認してください。相続開始の時から10年という上限がかかります。
4 期間内に何を行うのかを、共有者の間で改めて確認してください。期間の満了までに方針が定まらなければ、満了と同時に分割の請求を受け得る状態になります。
よくあるご質問
10年の期間を定めた契約は無効ですか。
契約全体が無効となるのではなく、期間が5年に短縮されると解されています(民法第256条第1項ただし書)。相続によって生じた共有については、5年以内かつ相続開始の時から10年以内という制限があります(民法第908条第2項)。
口頭の約束でも効力はありますか。
共有者の間では効力を有し得ますが、内容と期間を後から証明することが困難です。また、登記がなければ第三者に対して主張することができません(不動産登記法第59条第6号)。書面によることをお勧めいたします。
共有者の一人が持分を業者に売却しました。定めを主張できますか。
登記がされていれば主張することができますが、登記がされていなければ、業者からの分割の請求を妨げることはできません。登記事項証明書を確認してください。
期間の途中で分割をしたい場合はどうすればよいですか。
共有者の全員が合意すれば、期間の途中であっても分割をすることができます。分割をしない旨の契約は、共有者の間の合意ですので、全員の合意によって解消することができます。
遺言で分割が禁じられていますが、生活に困っています。
遺言による禁止は相続開始の時から5年を超えない期間に限られます(民法第908条第1項)。期間内であっても、預貯金の払戻しの制度(民法第909条の2)その他の方法によって当面の資金を確保できる場合がありますので、遺産の内容を確認いたします。
おわりに
分割をしない旨の定めは、共有関係を安定させるための有効な手段ですが、期間の上限があり、登記をしなければ第三者に主張できません。取決めをしたことで安心しておられる方ほど、登記の有無を確認していただく必要があります。登記事項証明書と取決めの書面をご用意のうえ、ご相談ください。必ず解決できますから、一緒に頑張りましょう。
共有物の分割をしない旨の定めに関するご相談
弁護士法人M&A総合法律事務所 電話番号 03-6435-8418
受付時間 8:00-21:00(土日祝含む)
出典及び参照した法令
民法第256条第1項及び第2項、第257条、第904条の3、第908条第1項から第5項まで、第909条の2
不動産登記法第59条第6号、第65条
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